5.エネルギー
ビジョン
AI を本格的に普及させるためには膨大な電力が不可欠であり、2030 年までの短期間でも世界全体で日本一国分に相当する追加電力が必要になると見込まれます。 日本が AI を使いこなし、テクノロジーを成長の原動力とするためには、安定的かつ大量の電力を確保することが前提条件となります。
しかしながら、わが国は化石燃料資源に乏しく火力発電依存では、燃料費輸入による国富の海外流出が大規模となり、また平野部も限られていることから再生可能エネルギーの大規模導入にも地理的な制約があります。 そのため、国内に存在するあらゆるエネルギー資源を最大限に活用しつつ、大容量電源の確保とゼロエミッション社会の実現を両立させる技術開発・設備投資を加速させる必要があります。
現状認識・課題分析
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『エネルギー白書2025』によると、日本のエネルギー自給率は2023年度時点で15.3%であり、G7各国で一番低い水準であると報告されています。
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『第 6 次エネルギー基本計画』(2021 年閣議決定)は、2030 年時点の電源構成を LNG 20%、石炭 19%、水力 11%、その他再エネ 25〜27%、原子力 20〜22%と設定していました。また『第 7 次エネルギー基本計画』(2025 年閣議決定)は、2040 年時点の電源構成を 火力3〜4割、再エネ4〜5割(太陽光23〜29%、風力4〜8%、水力8〜10%、地熱1〜2%、バイオマス5〜6%)、原子力2割と設定しています。
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2023 年の電源構成の実績は LNG 32%、石炭 29%、水力9%、その他再エネ約 23%、原子力 9%であり、目標との差は依然大きい状況です。加えて、高い割合を占めているLNGについては、地政学的リスクや他国の需要動向から、供給安定性・価格安定性に懸念があります。そのため、日本のエネルギー供給体制としては脆弱性を抱えている状況にあります。
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エネルギー目標として、2030年・2040年に向けて大きく増加が想定されている電力は、再エネ、原子力と水力です。
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再エネの大幅な増加には、国民負担・現実性の両面から大きなチャレンジがあります。
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再エネ賦課金による国民負担は、2024年度見込みで2.7兆円、2025年度見込みで3.1兆円に達しています。追加的な再エネ導入は国民負担の増加に繋がります。
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太陽光の導入量は国土面積当たりで既に世界上位水準(ドイツと同程度)にあるため、大幅な追加余地は住宅や建物屋根などに限られます。
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太陽光・風力が急増する場合は、蓄電池など調整力の同時整備を怠ると系統安定性が低下する懸念があります。
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原子力は安全審査を経た再稼働が進んでいますが、2030年度の再稼働想定実現に向けては、手続きや地域合意プロセスに改善の余地があります。
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水力は、日本にとって貴重な自然エネルギー資源です。現状は、 1957 年制定の多目的ダム法ベースの保守的運用が主流で、最新技術を活用した出力増強の余地があります。
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石炭、LNGの両火力発電は、縮小運用が前提となる中、老朽化による供給力低下が夏季ピーク時の需給逼迫を招いています。
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LNG 輸入費は 2023 年で約 6.5 兆円に上り(輸入総額の約 6%)、2024 年通年の貿易赤字 5.3 兆円を上回る規模であることから、AIによる電力需要増大期に当たっても発電規模維持・拡大には慎重な判断が必要となります。
政策概要
1. 大幅なエネルギー需要増に対応できるよう、2030 年・2040年に向けたエネルギーミックス目標を再設定し、実行します。
- 火力発電の一時的維持を明確化し、無理な再エネ拡大による国民負担増と供給不足を回避します。
- 2030年での原子力比率 20〜22 %の達成を目指し、国主導で再稼働支援策を整備します。2030 年時点で 25 基以上の運転を実現できるよう、手続きの迅速化と地域支援を両立させます。
- 多目的ダム法を見直し、水力発電のポテンシャルを開放します。既存ダムの再開発や揚水増強を推進し、水力比率 11 %を堅持しつつ変動再エネの調整力を高めます。
2. 2050 年ゼロエミッション社会に向けて、革新技術開発と制度基盤構築を支援します。
- 核融合技術の研究開発投資を強化し、核融合に関する技術の国際的な優位性を示すとともに、長期的なエネルギー問題の抜本的解決に備えます。
- 次世代型原子力(SMR、高温ガス炉など)の技術開発と普及を2030年代後半以降に見据えて支援します。
- デマンドレスポンスや分散型リソースを活用した柔軟なグリッド運用を推進し、AI 時代に適した高度な電力システムを構築します。