7. 医療

ビジョン

誰もが安心して医療へアクセスできる国民皆保険制度は日本が世界に誇る医療制度です。中でも高額療養費制度は日本が世界に誇る医療制度です。中でも高額医療費制度は、他国において深刻な問題となっている医療費破産から国民の生活を守る皆保険制度の中核機能です。現在検討が進められている拙速な上限額の引き上げは病気に苦しむ患者に対して未来に対する不安を煽る政策であり、断固として反対します。
加えて、少子高齢化や医療技術の進化による社会保障費の増加が急速に進んでいる現状については、継続的な制度の維持が可能となる施策が必要になります。必要な方に必要な医療を届けるため医療制度は進化し続ける必要があることも事実です。テクノロジーとデータを使い、より緻密なシステムを構築することで医療制度の非効率を減らし、より質の高い医療が報われる制度を目指します。 そして、人口構造、疾病構造の急変や増えていく変数にも対応するためのしなやかな制度、検討体制にアップグレードします。医療の現場をテクノロジーの力で支援することで、医療機関の経営および業務効率化を支援します 医療機関DXが進むことは医療機関の働き方をサステイナブルにするだけでなく、日常の診療の効率化、利便性など医療を受ける方々にもメリットが生じると考えます。 また、テクノロジーはITリテラシーの高い働き世代や若い方々のものだけではありません。一定の支援は必要となるかもしれませんがオンライン診療の普及や医療機関での待機時間の短縮は外出が困難な要介護者の方や僻地などで医療アクセスが困難な方々に対しての医療アクセス格差の是正にもつながります

1. 医療の有効性・重要度に応じたきめ細やかな自己負担へ

現状認識・課題分析

  • 我が国の医療保険制度では主に年齢と所得により個々の自己負担割合が決定され、受ける医療の内容や重症度に応じた調整は行われていません。

  • そのため、保険適用の範囲においては非常に安価に医療を受けることができ、これが日本の公衆衛生上、重要な意味合いをもっていることは疑う余地がありません。

  • 特に、高額療養費制度は、他国のような国民の医療破産を防ぎ、現役世代の労働力保全に寄与する極めて先進的かつ人道的な制度と言えます。昨今検討されている上限額の引き上げに関する議論は、闘病中の患者に未来への不安を抱かせるものであり、一方的で拙速なものとして強く反対します。

  • 一方で、OECDの報告では国際的に医療費のおよそ2割が健康成果に直結していない可能性を示しており、日本でも自然治癒が見込め、重篤性の無い疾患に対しての処方や類似した検査の重複など本質的な価値に乏しい医療が発生していることは否定できません。

  • 2022年度に242の急性期病院を対象に行われた調査では30種を超える診療行為を健康成果に直結しない医療と定義し、それらによる医療費が同施設の医療費の0.23〜0.51%を占めるとされました。これは、同期間の医療費に単純換算すると約3,000〜7,000億円規模に達すると試算されています。

  • 現在、国民医療費は2022年度に46兆円を超えましたが、少子高齢化と高度医療の進展により今後も増えていくことが予想されています。そのため、医療費の増加を抑制する施策とともに医療の成果にも着目した財源配分の検討が必要です。

政策概要

  • 高額医療費制度の上限の拙速な引き上げを見直します
  • 中長期的には、診療行為のエビデンス、費用対効果や重症度に基づく自己負担割合の複数段階化を検討します
    • 現在の健康保険法や高齢者医療確保法では、年齢による自己負担割合が言及されていますが、医療価値に応じた負担区分の段階化が可能となるよう、これらの法改正を検討します
    • 現在の診療報酬システムでは、医療機関が審査支払機関に請求する診療報酬のみが設定されていますが、診療内容による自己負担割合の影響についても制度に組み込みます
    • 上記の緻密な診療報酬制度を構築するため、全国医療データベース(NDB)に蓄えられた診療実績を解析し、柔軟に機動的に診療行為の有効性、費用対効果について議論するための基盤を整備します
  • 制度の複雑化による医療の現場や審査機関での事務処理の複雑化を解消するための仕組みの開発および導入を支援します
    • 医療機関への負担、サービスの質の低下を避けるために、電子レセプトに連携し窓口で即時に自己負担額が算出できるAI、システムの開発を支援します
    • 併せて、医療DXを推進する支援の枠組みについても整備します
  • これらの仕組みにより、医療の質、家計への負担を維持したまま、医療財政への負担軽減を目指します。
    • この評価に基づいて、外来用医薬品の自己負担割合が段階的に設定されます
    • 評価が不十分な医薬品は自己負担割合が高くなることもありますが、一方で、抗がん剤など代替の効かない医薬品については自己負担割合を0%としています
    • この他にも、海外の医療制度では年齢、所得以外に診療の内容や受診経路などで自己負担割合を変化させている例があります

2.治療成果に報いる医療アウトカム評価制度の導入

現状認識・課題分析

  • 日本では医療費の約3割が、糖尿病・COPD・心不全などの慢性疾患に費やされています
  • 日本では慢性疾患のアウトカム指標(HbA1c、FEV1、BNPなど)については医学的に整理がなされ、学会を中心にガイドラインの整備が進められているものの、医療制度の中で医療の質の向上を促す仕組みが十分に設計されているとは言い難い側面があります
    • 現行の医療制度は行われた処置・診察の回数に応じて診療報酬が設計されており、疾患コントロールが改善したことに対するインセンティブは設計されていない
    • 糖尿病や高血圧、脂質異常症などの慢性疾患の多くは重症化し、虚血性心疾患などのイベントが発生するまで、自覚症状に乏しいことも多く、患者サイドにも治療を強化し、積極的に状態をよくしようと動機づけしにくい場合がある
  • 海外では、治療成果に応じて報酬が支払われる制度が導入され、一定の課題が示されつつも医療の最適化と費用削減の両立が期待されています

政策概要

  • 「どれだけ診療が行われたか」だけでなく、「どれだけ良くなったか」にも報いる医療制度への転換を目指し、成果連動型の診療報酬制度を導入します
    • 糖尿病、COPD、心不全など、アウトカム指標が整備され患者数・医療費規模の大きい慢性疾患の治療成果を「血糖値」「呼吸機能」「心不全マーカー」などの指標で評価します
    • 治療の効果が高い医療機関に対しての報酬加算、患者に対しての還元を設計し、医療機関・患者の双方に動機づけを行ういます
  • 診療データを匿名化し、全国医療データベース(NDB)で一元管理。AIを活用した公平で迅速な評価を行う仕組みを整えます
    • アウトカム評価の効率化と医療現場の負担軽減のため、電子カルテの標準化、相互運用性の確保を進めます
    • 診療記録や検査結果をデータ化し、治療成果を判定、成果加算が自動的に反映される仕組みを設計します
    • アウトカム評価指標の提出、確認が行われることで医療機関の負担が増えないよう、民間企業と連携した電子カルテの解析システムの開発を促します
    • また、電子カルテの情報連携においてセキュリティとプライバシーを確保するため、必要な法令、医療機関向け指針の整備を進めます

3.オンライン診療 / 処方受け取り方法を充実し、通院のない受診を実現

現状認識・課題分析

  • リモートワークやECサイトの利用などは広く生活に普及してきましたが、オンライン診療についてはまだ十分に普及しているとは言い難い状況かと思います
  • オンライン診療には対面と比べて患者さんの状況、所見が把握しにくかったり、体調が悪化した際に高度医療機関との連携導線が確立されていなかったりと一定の課題がある一方で、適切に普及すれば多くの方々にとってメリットの大きいシステムだと考えます
    • 風邪や花粉症などの軽い相談や慢性疾患で継続的に同じ服薬で経過観察している患者さんにとって、診療のために仕事や家事・育児を調整して対面で受診することはまだまだ負担が大きいと言えます
    • 僻地や島嶼部などの医療アクセスが難しい地域にお住まいの方々や一人で外出することが難しい方などの場合、医療機関で相談をしたくても受診控えをしている場合もあると思います
  • オンライン診療が進まない要因の一つとして、医療制度・診療報酬体制の整備、システム・インフラの整備、医療の質や安全対策の整備、利用者側の利便性の課題などがあります
    • 現在の診療報酬制度ではオンライン診療が対面診療と比べて優遇されているとは言えず、医療機関側にとってシステム投資や運用構築を乗り越えてまで推し進める動機づけが不足しています
    • また、オンライン診療で医師に相談をしても、受診後の医薬品の受け取りに調剤薬局を訪ねる必要があり、一連の受療行動をオンラインで完結できていない状況も多いかと思います
    • 他方で、オンライン診療の無軌道な拡大は、受診件数の爆発的な増大や不適切利用のリスクもあります

政策概要

  • オンライン診療普及のための診療報酬、インセンティブの設計
    • オンライン診療を普及させるための診療報酬の加算を検討します
    • 島嶼部などの僻地医療、要介護者など独力で受診の難しい方々の受診、生活習慣病などで病状の安定している状況での再診など、ユースケースを整備し、段階的にオンライン診療を普及させるための枠組みを整備します
  • 安全性を担保するためのガイドライン整備
    • 本人確認、重症化時のバックアップ体制など、オンライン診療を安全に行い、標準的なサービスを担保するための規定を整備
  • 薬の受け取りまでオンラインで完結するための枠組みの整備
    • オンライン服薬指導や僻地でのドローンによる医薬品配送などを行うためのガイドラインなどは整備が進みつつあります
    • 配送費用については、物流コストが自動運転やドローン技術の進化により引き下げられる可能性も考えられますが、現状では調剤薬局が担う状況となっており、費用負担が運用の壁となっています
    • 僻地に住む方や外出が困難な方など、受診が困難な方の医療アクセスの確保の観点でも、一定の枠組みでの物流コストの診療報酬での手当を検討します
  • これらの施策により、オンライン診療による受診機会の格差の是正を進めるとともに、働き世代の受診による生産性低下の抑制を見込みます

4. 画像診断AIで見逃しリスクと医師不足の解消を同時に

現状認識・課題分析

  • 日本では人口100 万人当たり CT 115.7台・MRI 57.4台とOECD加盟国の中でも最多の画像検査機器が稼働しています
  • 一方で、それらの画像検査機器で行われた検査結果を評価し、読影レポートを作成する放射線科医は他国と比べて決して多いと言える水準にはなく、放射線科医一人当たりの年間検査数は欧米の3-4倍とも言われています
  • 検査に対して医師が不足するということは、それだけ一件のCT、MRI検査結果を評価するのにかけられる時間が不足するということですし、1日に対応できる検査数が少なくなるということに繋がります。そして、それは検査の見落としリスクや医師不足地域での検査待機時間の増加に繋がります
  • 日本医学放射線学会はかねてからCT検査数の増大に放射線科医の増加が追いついていないことに対して警鐘を鳴らしています
  • こうした状況に対して、昨今のAIやIT技術の進化は親和性が高いと考えます
  • すでに国内外でAI画像解析による画像解析やレポート作成支援は検討が進められており、欧州放射線学会が同学会会員に行った調査では回答者の約半数が臨床現場でAIを積極的に活用していると答えています。日本でも、AIで画像解析を行い読影レポートの作成支援をするシステムが発売されています
  • しかし、技術的な萌芽はみられていますが、日本ではまだまだ画像解析やレポート作成支援システムの普及が進んでいるとは言い難い状況です
    • 画像解析システムやレポート作成支援システムの導入が進まない背景の一つに、導入コストの正当化の難しさが挙げられます
    • 日本では公的医療保険で画像検査を行った際の診療報酬は規定されており、画像検査システムの導入コストやシステム利用料の負担はそのまま医療機関の利益構造の悪化に繋がります
    • 放射線科医が不足しており、慢性的に過重労働が発生している場合や検査の待機期間の遅延が生じている医療機関では、処理可能な検査件数の増加・効率化による経営上の便益も期待されますが、高額なシステムの導入の検討はなかなか難しい医療機関が多いと考えられます

政策概要

  • システム導入費の補助による画像解析システムの導入推進を行います
    • 時限措置として画像検査の補助システムを導入する医療機関に対し、初期導入費用の一定額補助を実施します
  • 診断AIへの加算を制定し、継続利用を促すとともにAI画像解析の成果について評価を行います
    • CT・MRI読影にAI画像解析を併用した場合に一定の診療報酬の加算を暫定的に設けます
    • AI画像解析の運用コストについて一定の担保をするとともに、AI画像解析が行われた施設での読影効率や解析精度、時間外労働への影響を分析し、エビデンス構築を促します
  • 人とAIが協働する医療のルールづくりを進めます
    • AIの精度が進化しても診断を行うのは医師である以上、最終責任は医師が負う必要があります
    • 一方で、AIが提示した異常や逆にAIが提示しなかった異常は医師の判断に影響を及ぼす以上、メーカーの責任や性能評価についても整理が必要となります
    • 国際的な潮流と協調し、機器開発を行う事業者と医療従事者の間で整合性を図りながら、国内制度を整備し、ルールのグレーゾーンを解消していく必要があります