10.デジタル民主主義

ビジョン

今の投票による間接民主主義は数百年前に出来上がった制度です。当時はインターネットもSNSもAIもありませんでした。SNSの普及などにより、誰もが気軽に意見を発信できるようになった現代において、選挙で代表者を選ぶ方法に加え、従来の陳情のような高いハードルを感じることなく、より多様な民意を個別の政策課題にきめ細かく反映できる仕組みが求められています。今のデジタル技術を使うことによって、より多くの人がより深いレベルでコラボレーションをすることが出来るようになると考えています。

また、デジタルツールを導入するといっても、最終的な意思決定をAI任せや多数決任せにするというわけではありません。私たちは、政治的意思決定は責任が取れる主体である人間が行うべきであると考えています。

1.「デジタル目安箱」 により、もっと速く国民の声が届く政治を。

現状認識・課題分析

  • 国会での議論や法案審議の内容が国民に十分に伝わっておらず、また国民の声が国会に届きにくい状況があります。従来の政治参加の仕組みでは、多様な意見を効率的に集約し、政策形成に反映させることが困難でした。情報の流れが一方向的であり、国民と国会の間に双方向のコミュニケーション基盤が不足しています。
  • また、現在の請願制度は紙の書面でしか受理されないため、物理的・時間的なハードルが高く、多くの国民にとって利用しづらい制度となっています。デジタル時代において、国民が国政に対する要望を直接伝える手段が限定的であることは、民主主義の発展を阻害する要因となっています。

政策概要

  • チームみらいが2025年に国会で何が話し合われているかを分かりやすく可視化する『みらい議会』というツールを発表しました。『みらい議会』では各法案のステータスや背景をわかりやすく解説しています。
  • 現状の『みらい議会』は、国会のリアルを国民に届ける「情報の可視化」に主眼を置いていました。次のステップでは、その逆向きの流れ、つまり「国民の声を国会に届ける」ための仕組みを実装します。
  • 私たちはこのツールをさらに進化させ、「国民の声で国会を動かす」事例をつくっていきます。単に国会の状況を知るだけでなく、それを見た国民の皆さまが意見を投げかけ、それをAIが集約して国会へフィードバックできる、いわば「デジタル目安箱」へと進化させます。
  • その核となるのが、昨年から実験を開始している「AIインタビュー」です。これはオンライン上でAIが、有識者や当事者の皆さまにインタビューを行う仕組みです。
  • AIを活用する最大のメリットは、その圧倒的な効率性にあります。「人工知能基本計画」に関するインタビューでは、数日間で延べ1,200時間以上のインタビューを実施しました。人間が50日間寝ずに働き続けてようやく終わる分量を、AIならわずか数日で完了し、意見を集約することができるのです。
  • 今後は、このAIインタビュー機能を『みらい議会』に統合します。私たちは、ここで得られた多様な知見を自分たちの議席を通じて国会へ持ち込みます。多角的な視点を取り入れることで、国会の議論をよりアップデートすることができると考えています。『みらい議会』による意見集約と同時に、「電子請願」の実現を目指します。オンラインで請願を集めることができれば、より多くの人の意見を反映させることが可能です。 オンライン化における最大の壁は、「その署名が本当に本人のものか」という信頼性の担保でした。しかし、現在ではスマートフォンとマイナンバーカードによる本人認証が可能になっています。我々は、マイナ認証付き電子署名の活用と電子請願の法制化を目指して動いていきます。

2. 政治とカネ問題解決のための、政治資金透明化の推進

現状認識・課題分析

 裏金工作などのいわゆる『政治とカネ』問題により、国民の政治に対する信頼が揺らいでいます。政治資金収支報告書などで一定の情報は開示はされているものの、なかなかお金の流れは理解しづらいままの状況です。この不透明性は、有権者にとっては由々しき課題になっています。一方で、政治家にとっても、政治資金の処理はミスが政治家生命に直結してしまうことから、非常に多大な工数をかけて行われており、負担が大きくなっています。

 一方で、民間や他国では好事例が存在します。例えばスウェーデンでは30年前から閣僚に対して国が発行したクレジットカードを貸与しています。クレジットカード経由で使われた支出に関しては利用明細が自動的に公開されるようになっており、誰がどこにお金を使ったかが自動的に分かるようになっています。民間ではクラウド会計ソフト、クレジットカード、銀行口座の3つが連携されることによって、資金管理の状態をリアルタイムで把握できるダッシュボードが存在します。

政策概要

  • 2025年、チームみらいは政治資金の流れを透明性を持って公開するプラットフォーム「みらい まる見え政治資金」をリリースしました。
  • 今年の3月、チームみらいとして初めての政治資金収支報告書の作成時期を迎えます。私たちはこの報告書を、『みらい まる見え政治資金』を使って作成します。現状のチームみらいの収支は、『みらい まる見え政治資金』でわかりやすくご覧いただけます。
  • 私たちは、政治資金の流れを透明化するツール『みらい まる見え政治資金』を、自党のみならず他党へも広げていきます。
    • 昨年12月に実現した参議院自民党との政策合意の中で、今年度中に所属議員全員に向けて『まる見え政治資金』を周知する機会を設けることを約束いただきました。党首の安野貴博が直接、議員の皆さまに向けて詳しく説明を行う予定です。
    • また、自民党以外にも多くの議員の方々から興味を持っていただいており、党派を超えた協調を進めています。
  • ツールの変革だけでなく、ルールによる変革も提言し、「ツールとルールの両輪の改革」を実現します。実は、現在の政治の会計のやり方は、民間の方法とは大きく異なります。その会計ルールを民間の基準に合わせることを提案していきます。
    • 「単式簿記」から、民間と同じ「複式簿記」へ
    • 「現金主義(※1)」から、民間と同じ「発生主義(※2)」へ
      • ※1 現金主義:現金の出入りに基づいて記載
      • ※2 発生主義:取引の発生に基づいて帳簿付けを行うため、財務状況がわかりやすくなる。企業の会計では原則「発生主義」をとる
    • これにより、お金の流れが透明化されるだけでなく、民間で広く普及している便利なクラウド会計サービスを、政治家もそのまま使えるようになるというメリットもあります。

3.「誰でも政治にもっと参加して、直接政策を作れる社会」を実現します

3-1.レベル1:既にある多様な声を、AIの力で整理・可視化し、政策形成につなげます

現状認識・課題分析

  • パブリックコメント、SNS、種々の掲示板、該当インタビュー、ひいてはデモ活動など、既に大量の市民の声が存在しているにもかかわらず、それを構造的に理解し、政策に反映する仕組みは限られています。
  • 多くの重要な声が、見過ごされたり、ノイズの中に埋もれてしまう状況が続いています。
  • 例えば、パブリックコメント制度では、何個も同じ趣旨の投稿を繰り返す多数派工作などの存在があります。
  • 一方で、自然言語処理やAIによる構造化技術は急速に進展しており、膨大な意見を質的に整理・可視化する能力が向上しています。

政策概要

  • SNS投稿、街の声、パブコメなどから収集された意見を、AIが構造化・可視化する「ブロードリスニング」を実現します。
  • 具体的なプロダクト
    • TTTC広聴AIなど。すでに自治体や政党で実績多数あり。
  • 描く未来: これまで聞き逃していた国民の大事な声が把握され、政治家や行政がより適切な政策判断を下す土壌が整います。

3-2.レベル2:声になっていない声を、AIの力で引き出します

現状認識・課題分析

  • 声を上げる人と、声を上げない人の間には大きな情報格差があります。特に弱い立場の人や、言語化が苦手な人の思いや生活上の不便は、従来の政治では拾われにくい構造にあります。
  • 台湾の「JOIN」では、国民提案のうち約170件が政策化され、vTaiwanでは同性婚やUber法案などの形成に貢献しました。こうした先行事例は、日本における国民参加型プラットフォームの可能性を示唆しています。
    • JOINでは、2015年の公開以来の10年で約10,000件の市民提案があり、約350件が5,000件以上の賛同を集め、約170件が実際の政策に反映されました。全人口の7%相当(150万人)の登録者がおり、教科書にも掲載されています。
  • たとえば、JOINを通じて野良犬・野良猫政策が転換されたように、可視化された民意が実際の行政行動を変える事例も生まれています。
    • 野良犬・野良猫は捉えられたら不妊治療を経て町に解放されていました。JOINで動物が可哀そうという声が多数集まり、町への解放の前に里親を探すようなオペレーションに変わりました。
    • このプラットフォームを通じて初めて、市民の野良犬・野良猫への関心の強さが分かり、実際に行政が行動に移すことができました。

政策概要

  • ブロードリスニングをさらに発展させ、「AIが全国民にインタビューしてくれる」ような対話型意見抽出ツールを開発・展開します。

  • 1)で記載した、オンライン上でAIが、有識者や当事者の皆さまにインタビューを行う仕組み「AIインタビュー」を本格的に展開します。

  • 具体的なプロダクト:いどばた

    • 政策文書を読みながら、誰でもAIとチャットを通じて質問・意見提出が可能です。寄せられた声は、AIとの対話を通じて提案書の形にまとまり、URL付きで提出・追跡できる仕組みとなっています。
    • マニフェストに対する提案をAIが引き出し、実際にわずか3日で1000件以上の意見を収集できています。
    • 対面イベント(みらいいどばた会議)でも、数分で参加者全員の本音を引き出し可視化できています。
  • 描く未来

    • ツールによってSNSに投稿しない人、言葉にできない「もやもや」まで掘り出します。

    • 地方自治体レベルのミクロな課題解決にも有効であるため、国主導で地方自治体への積極的な導入を促進します。

      • 出産申請で役所に出向くのがつらい、生理用品が必要といった、十人十色の困りごとを拾い上げます。
    • 最終的な判断はあくまで人間が責任をもって行い、AIはその判断に必要な情報を整理し、的確な意思決定を支える役割を果たします。

3-3. レベル3:AIで熟議を支援し、対立を乗り越える合意形成を実現します

現状認識・課題分析

  • 現代の政策課題には、ステークホルダーによって価値観や利害が衝突しやすいものが多く、結果として「全員が損をしている状態」が放置される例も見られます。
  • 熟議は有効な手段ですが、高コストかつスケールしづらいという課題があります。
  • 一方、近年では、AIを活用して熟議の可視化・促進・要約を行う研究が世界中で進んでおり、ステークホルダー間の合意形成を補助する技術が実用化されつつあります。

政策概要

  • 一億二千万の国民が、井戸端会議のように参加できる「熟議型政策形成プラットフォーム(いどばたシステム)」を構築します。
  • 以下の3段階でAIが支援:
    • 論点投票:SNSや投稿フォームなどからAIが国民の声を集め、重要な論点を抽出・可視化。背景や構造を整理したうえで、市民が投票によって優先課題を決められる仕組みを整えます。
    • 重要論点議論:誰でも参加できるオンライン議論の場を開き、AIが中立的に議論を促進・整理。初めての人でも流れが分かるよう可視化し、寄せられた声から解決策のたたき台を導き出します。
    • 具体提案議論:AIが議論をモニタリングし、多様な視点を取り込みながら提案を洗練。偏りや抜け漏れを補正し、より実効性の高い政策案へと仕上げていきます。
  • 描く未来:
    • 対立する利害の間から「誰もが納得できる第三案」を熟議によって導き出し、建設的な合意形成を実現します。
    • 国民の声を分断ではなく対話へつなげ、政治への参加が「対立の土俵」ではなく「共創の場」となる仕組みをつくります。
    • 最終的な判断は責任ある人間が行い、AIは議論の可視化・構造化・中立的な進行を担うことで、より透明で納得感ある意思決定を支えます。

3-4. 合理的な政策選定を支援する「Futarchy(予測市場)」の実験導入を目指します

現状認識・課題分析

  • 民主主義では、民意を反映しながらも、政策効果の合理的な評価が難しい側面があります。
  • 予測市場は、多数の参加者が身銭を切り未来を予測する仕組みであり、比較的高精度な結果が得られるとされ、企業や研究機関での試験導入が進んでいます。
  • Futarchyは、この予測市場を用いて「どの政策を実行すれば目標を最も効果的に達成できるか」を判定する枠組みです。
    • たとえば「消費税を5%にした場合のインフレ率や翌年の経済成長はどうなるか」など、複数の政策オプションの効果を定量的に比較できます。
  • 現時点で国家レベルでの本格導入はなく、あくまで理論段階にとどまっていますが、合理性の高い政策形成を目指す上で将来的な可能性を持っています。

政策概要

  • 将来的な実装を視野に入れ、Futarchy型予測市場の実験導入を開始します。
  • 市場参加者が、特定の政策に対する結果(例:インフレ率、雇用率など)を予測する形式で市場に参加。インセンティブを伴うため、参加者は真剣に情報収集を行い、市場全体としての予測精度が向上します。
  • 政策形成における「民意」と「予測による合理性」のバランスを取る新たな仕組みとして、他の政策参加手段と組み合わせて活用を進めていきます。
  • 当面は小規模な予測市場での実証実験を重ね、信頼性や運用課題を精査しながら、段階的に制度設計へと反映させていきます。
  • 将来的には、立法・行政の政策決定で、予測市場の援用を可能にします。
  • Futarchyの活用を通じ、AIだけに偏らず、人間の集合知の力を活用した政策の意思決定が可能になります。

補足:『デジタル民主主義2030』とは?

デジタル民主主義2030は安野たかひろが2025年1月に立ち上げたオープンソース開発のコミュニティです。現在も政治的中立を保ちながら活動を進めていきます(中立性維持を構造上可能なようにすべく、安野貴博も2025年5月にボードメンバーを辞しています)。詳細はこちらのページをご確認ください。

補足:Plurality(多元性)について

Pluralityとは、オードリー・タン氏とE・グレン・ワイル氏が共同で提唱する概念です。この概念は「社会的および文化的な違いを超えた協働を認識し、尊重し、力を与えるテクノロジー」と定義されています。デジタル技術を活用して多様な意見をまとめあげ、より良い合意形成を目指すデジタル民主主義にとって、このPluralityの考え方は重要な指針となります。詳細は「Plurality」とは何か|日本語版解説をご参照ください。