3.科学技術
ビジョン
天然資源も人口増加もない日本で経済的成長を実現するための糸口はテクノロジー、創造性、そしてイノベーションにこそあります。そして、これらを着実に発展させるためには科学技術に対して惜しみない投資を行わなければなりません。チームみらいは、基礎研究への投資を徹底的に行い、イノベーションの種まきをすると同時に、芽吹いてきた種に戦略的に投資し、研究成果を社会に実装することで新産業を生み出します。新産業を支える人材も高専やリスクリングへの投資によって充実させます。
1. 戦略的投資による先端テクノロジーの社会実装
ロボティクス、マテリアル、再生医療といった日本の真の強みに資本を集中投下します。こうした分野での研究成果を研究で終わらせず、新しい時代の日本を支える「産業」へと昇華させ、世界市場で圧倒的な地位を確立します。
また、テクノロジーは安全・安心やインクルーシブな社会づくりにも直結します。災害から30分以内に復旧する通信網、食糧安全保障を支える持続可能な農業、そして孤独を解消する手話翻訳アプリなど、科学技術を「誰一人取り残さない社会」の礎とします。
2. 質の高い知を生み出す大学・研究基盤の抜本改革
現在、日本の論文数は世界5位を維持しながらも、論文の質(引用数トップ10%・1%)ではインド、イタリア、韓国といった国々に後塵を拝し、12〜13位まで低迷しています。このように論文数は多い一方、質の高い論文は少ない背景には、研究者が質の高い研究にじっくり取組むことができていない、という課題があるのではないか?と考えられます。
- 【参考】2024年、トップ10%論文数(質の高い論文数)を指標とすると、日本(13位)の上に、インド(4位)、イタリア(6位)、韓国(9位)、フランス(10位)、スペイン(11位)、イラン(12位)などの国々がいます。同年、トップ1%論文数(極めて質の高い論文数)でみても、日本(12位)の上に、イタリア(5位)、インド(6位)、韓国(10位)、スペイン(11位)などの国々がランクインしています。(科学技術指標2024)
研究者が「質の高い研究」にじっくり取り組めない最大の要因は、削減され続けた運営費交付金と、短期的なKPIに縛られた競争的資金の弊害にあります。私たちは運営費交付金を大幅に拡充し、物価や人件費に連動する安定的な財務モデルを構築します。研究費の使い勝手を柔軟にし、AI・IT導入による事務負担の軽減を徹底することで、研究者が10年先を見据えた独創的な探求に専念できる環境を再生します。寄付文化も醸成し、世界最高水準の知を恒久的に支えるエコシステムを構築します。
3. 若手研究者の育成、活躍環境の整備
日本の未来を担う博士課程学生を、もはや「学生」ではなく「知のプロフェッショナル」として位置づけます。経済的自立を支える所得連動型貸与やライフイベント支援、ハラスメントをなくしてのびのびと研究できる環境づくりをパッケージ化し、優秀な人材の海外流出を食い止めます。
4. 高専への投資・リスキリング推進による新産業の担い手育成
実践的技術の宝庫である高専(KOSEN)に最先端の計算資源を投入し、「理論と実装」を兼ね備えた起業家・技術者の輩出拠点へとアップデートします。ハラスメントのない透明性の高い研究環境を担保し、若手が失敗を恐れずに挑戦できる「イノベーションの総本山」を日本中に張り巡らせます。
AIによる労働市場の激変に対しては、リスキリングを推進します。カナダの事例に学ぶAIマッチング基盤を構築し、個人の潜在能力と成長産業を直結させることで、AIを「脅威」ではなく「所得向上の武器」へと変え、安心して豊かな暮らしができる日本を創り上げます。
1. 戦略的投資による先端テクノロジーの社会実装
1-1. 次世代の国際競争力を牽引する戦略技術の産業化
- 現状分析_高い技術力と産業化の遅れ:日本は材料、ロボティクス、精密加工、再生医療、宇宙技術で世界的な技術力を保持していますが、戦略的な資本集中が欠けていたため、実用化・産業化・グローバル展開に遅れが出ています。その背景には、公的支援が技術主導で分散し、限られた財政・人材資源を「選択と集中」できていないことがあります。
- 目指す姿_世界と競争可能な領域への集中投資:日本の有する分野の中で「技術的強み」「将来の産業競争力の鍵」「安全保障との直結」の3条件を満たす分野を明確に選定し、世界市場で圧倒的な地位を確立することを目指します。
- 政策1_重点技術ポートフォリオの策定と開発加速:日本の強みである先端技術をバラバラに支援するのではなく、世界市場を牽引できるポテンシャルを持つ領域に資本を集中投下します。
- ロボティクス/フィジカルAI:日本には、製造業における高度な技術力(FA、センサー技術)を基盤とし、ヒューマノイドや四足歩行ロボットなどで世界トップクラスのプレーヤーが存在しています。AIと組み合わせたロボットは介護、物流、警備など多領域で応用可能です。特に高齢化社会において、省人化・自動化は社会的課題の解決に直結します。
- レーザー:半導体製造や精密加工(次世代EV部品、医療機器)、安全保障・防衛に不可欠な技術として投資します。
- マテリアル:AI×マテリアルインフォマティクスの進展により高速な素材探索が可能になりつつあります。レアメタル・レアアース代替素材、半導体基板、高強度軽量素材など、産業競争力や経済安全保障に直結します。国内産業の競争力維持の観点でも不可欠な分野だと考えています。
- 再生医療:高齢化に伴う健康寿命延伸ニーズに応え、従来医療の限界を超え、「よりよく生きる」ことを支える医療の実現を目指します。この実現のため、特にラボラトリーオートメーション(実験自動化)技術を積極的に導入・推進します。ロボットによる実験自動化は、細胞培養の効率化、新薬候補のハイスループットスクリーニング、個別化医療に繋がる治療法開発などを劇的に加速させることが期待されます。さらに、実験プロセスのクラウド化を進め、AIと連携した24時間365日稼働の自動実験プラットフォームを構築することで、世界中から実験リソースへのアクセスを可能にし、基礎科学から実用化までのスピードを飛躍的に向上させ、この分野における国際競争力を強化します。
- 政策2_安定的資金と特区の導入:戦略技術特化型予算枠を確保し、中長期的に資源を配分します。また、宇宙×筑波、再生医療×神戸といった産業集積拠点を整備し、税制優遇、規制緩和などをセットで提供します。
- 政策4_官民連携の推進体制:分野ごとに「技術育成ファンド・成長会議」を設置し、技術評価、ロードマップ策定、規制改革を一体的に議論します。
- 政策5_ラボラトリーオートメーションの徹底推進:2024年開始の科学研究向けAI基盤モデル開発(TRIP-AGIS)を加速させます。24時間365日稼働の自動実験プラットフォームをクラウド化して構築し、基礎科学から実用化までのスピードを飛躍的に向上させます。
1-2. エネルギー・安全保障・国土強靭化の自律
- 現状分析_潜在的な資源と基盤の脆弱性:日本は世界6位の広大な排他的経済水域(EEZ)を持ちながら、海洋資源(メタンハイドレート、レアアース泥等)の開発に民間投資が及びにくい状況です。また、大規模災害時の通信確保や、重要インフラ(電力、通信、金融等)へのサイバー攻撃リスクが顕在化しています。
- 目指す姿_テクノロジーによるレジリエントな国家づくり:日本の地理的優位性と最先端の宇宙・サイバー技術を融合させ、有事や災害に強い国家基盤を構築します。尖閣諸島等の領海を守りつつ海洋資源を実用化し、核融合技術と並ぶエネルギー安全保障を確立します。また、いかなる大規模災害でも即座に機能を回復できる社会基盤を築きます。
- 政策1_海洋探査と資源実用化の推進:ディープテック領域の中でも特に投資が届きにくい海洋資源開発において、国が主導して発掘・実用化を推進し、日本を資源国家へと導きます。
- 政策2_宇宙・衛星コンステレーションの活用:低軌道衛星による通信網を5G以降の重要基盤と位置づけ、災害監視、気象予測、農業DX、モビリティ領域へ応用します。
- 政策3_災害時ゼロダウン・ネットワークとサイバー防御:2030年代前半までに、大規模災害から30分以内に通信を復旧できる社会基盤を構築します。低コスト衛星やAIスペクトラム制御等を重点開発し、平時は農業DX等で収益を上げるデュアルユースモデルを導入します。重要インフラ防御を国益として強化し、日系企業の海外展開における競争優位性を高めます。
1-3. テクノロジーでインクルーシブ社会と地方創生を実現
- 現状分析_生活現場の課題と人手不足:手話通訳者の高齢化やプライバシー保護(医療現場等での情報漏洩リスク)の課題、農業における環境負荷とコスト、介護現場の負担など、切実な社会課題が山積しています。
- 目指す姿_科学技術が暮らしを支えるインクルーシブ社会:障害障がい、年齢、居住地に関わらず、すべての人が恩恵を受けられる社会を目指します。
- 政策1_手話翻訳アプリの推進:ろう者・難聴者の手話を読み取り、音声・文字に変換する機能を開発します。通訳者を介さないことで、医療情報の秘匿性を守り、通訳者不足を解消します。利用者が属性(ろう者・難聴者か否か)を選択できるUIを導入します。
- 政策2_食糧問題の解決と地方創生:乾田直播・節水灌漑(マイコスDDSR)の研究開発を促進します。水を張らない栽培で省力化・コスト削減を実現し、メタンガス抑制による環境負荷低減も両立させます。雑草管理や連作障害などの課題を克服し、持続可能な農業を地方創生の核に据えます。
1-4. ディープテックへの投資規模の拡大
- 現状分析:日本は世界的に見ても高度な技術基盤を有する国でありながら、ディープテック領域におけるスタートアップの創出数は欧米諸国や中国と比べて依然として少ないという課題があります。民間投資の多くが比較的リスクの低い分野に集中し、ディープテック分野では資金ギャップが生じています。その結果、ディープテックに関する投資割合は全体の5〜10%程度に留まっており、特にシード〜シリーズA段階において、いわゆる「死の谷」が存在します。
- 原因① ディープテックは研究開発型であるがゆえに、製品化までに時間がかかり、ビジネスリスクに加えて技術リスクもあるため、短期的リターンが見込みにくく、民間VCや事業会社は投資を敬遠する傾向にあります。
- 原因② ディープテックベンチャーは、事業の特性上、研究開発に多額の先行投資が必要であり、数年間にわたり大きな赤字(いわゆる「Jカーブ」)を計上することも少なくありません。この特性が一般の事業評価と馴染まないため、資金調達の困難さに繋がっている側面があります。
- 原因③ 初期技術の育成やPoC支援(実証)フェーズまでは一定程度整備されつつありますが、グロース以降の支援は十分ではありません。既存制度(SBIRやNEDOによるDTSU)が担保している「初期の技術育成支援」や「PoC支援」は一定充実しつつある一方で、民間投資家が入りやすくなるための仕組みや、出口戦略(事業化・スケールアップ)に向けた伴走支援はまだ不足しています
- 政策1_ファンドの創設:スケールアップ・グローバル展開に必要な資金と支援を一体で提供するファンドを公的に創設します
- 政府系機関を主幹とし、投資枠を確保します。ファンドには、「規制産業」「基幹技術(半導体、材料、量子等)」などを重点対象領域として設定します。
- 官民共同投資の仕組みとして、民間のVCやCVCとの共同出資の枠組み(マッチングファンド)を検討します。例えば民間側からの投資があった際に、公的側が同額〜数倍の投資を行うことで、民間投資を誘発し、資金提供者間のリスク分散を行うとともに、公的資金のレバレッジがより効きやすい仕組みをつくります。
- 政策2_ディープテック領域へ投資を行う投資家に対する税制優遇制度を導入:創業5年以下のディープテックベンチャーを対象として、事業者が研究開発に集中し将来の大きな成長を支援するため、10年程度の期間を目安とした法人税減免措置などを検討します。
- 【参考】研究開発税制やオープンイノベーション促進税制、エンジェル税制がありますが、対象にVCからの投資が入っていないことや、スタートアップ自身の減税措置が不十分である点など、依然として改善の余地があります。
2. 質の高い知を生み出す大学・研究基盤の抜本改革
2-1. 運営費交付金の大幅拡充
- 現状分析 :現在、政府の研究開発投資は総額としては増えています。しかし、大学が裁量をもって使うことのできる運営費交付金は法人化以降、減少しています。運営費交付金が減少することで、多くの大学で外部資金への依存が高まっています。その結果、短期的な成果を求められる資金が増え、基礎研究や挑戦的なテーマへの取り組みがしづらい状況です。特に、地方大学を中心に大学の運営基盤そのものが脆弱化しています。その結果、基本的な経費も各研究室の運営費で賄わざるを得ず、研究活動や教育に深刻な支障が生じています。
- 政策1_運営費交付金の規模を大幅拡充:運営費交付金の「基幹経費分」を約2000億円分増やします(絶対額で1.28兆円へ)。現在、令和7年度の補正予算で運営費交付金421億円が措置され、令和8年度予算の政府原案は対前年度188億円増となる予定です。しかし、2004年度水準からこの間の人件費の増額
- 運営費交付金は2004年(国立大学法人化時点)に1.24兆円だったものが、2024年には1.08兆円になっています。そのため、2004年の水準に戻すためには1600億円程度の増額が必要になります。(出典:国立大学協会HP)
- しかし、元の水準に戻すだけでは十分ではありません。国立大学法人は人事院勧告に則って人件費を上げることが求められます。2004年から2025年までに人件費は10%ほど増額となっています。また、科学実験やAI研究には電気が必要ですが、電気代も2004年から大きく値上がりしています。産業用電気料金は2010年から2023年にかけて74%向上しています(資源エネルギー庁)。これらを勘案し、最低でも運営費交付金は2000億円まで増額することが望ましいと考えています。
- 政策2_運営費交付金をなめらかな制度にする:今後、物価の変動によって大学の経営が行き詰まらないよう、迅速な対応をできるようにするため、運営費交付金が人事院勧告や光熱費などの増加分と連動する仕組みとします。こうすることで、国立大学の研究者の人件費の最低限のところは国が保証することが可能になり、大学の経営に最低限必要な資金は国が責任をもって支出する仕組みとします。
- 政策3_運営費交付金を安定化:基盤経費分の「成果を中心とする実績状況に基づく配分」を廃止し、成果による上下があるものは「機能強化促進分」に一本化します。こうすることで「基幹経費分」の1.28兆円を安定的に分配します。
- 【参考】現状、運営費交付金のうち基盤的な経費部分にも「成果を中心とする実績状況に基づく配分」が存在します。文部科学省HPの説明によると、KPIの達成状況に応じて75%まで削減される可能性があります。しかし、基盤的な運営費について、成果連動の考え方を組み込むのは、資金の目的や特性と不整合であると考えられます。
2-2. 挑戦的な研究を促進する研究費改革
- 現状分析:研究者が自由に使える研究費が相対的に少なく、使途も厳しく制限されているため、機動的な研究環境への投資や、長期的な視点での研究活動が困難になっています。
- 原因① 多くの研究資金が、公募テーマに沿う1-3年単位のKPIや短期成果に基づく配分となっており、基礎研究や挑戦的なテーマへの取り組みがしづらい課題があります。研究費を獲得しなければ研究が立ち行かない状況が、競争的資金獲得のための書類作成業務の更なる負担増を招いています。
- 原因② 研究プロジェクトの予算は、原則としてその年度の終わり(3月末など)までに使い切らないと国に返さなければならないため(予算失効)、複数年にわたる研究計画であっても、年度内に支出を終える必要があります。特に、予算が認められた後でなければ発注できない上、納品にも時間がかかる高価な研究機器の購入や、長期的な視点での研究者の雇用計画を進める上で、大きな障害となっています。ただし、現在、科研費は基金化されて、前倒し利用や繰越しがしやすくなりました。
- 【参考】文科省のデータによると、大学等教員の職務活動時間割合において、研究活動の占める割合はH14では46.5%であったのに対してH30で32.9%と単調減少、一方教育活動の占める時間は23.7%→28.5%で単調増加となっています
- 目指す姿:短期的な成果やKPIの呪縛から研究者を解放し、10年先を見据えた革新的な知の創出に専念できる環境を構築します。
- 政策1_挑戦的な研究を促進する研究費の導入:既存の科研費に比して、さらに挑戦的・基礎的研究を推進できるような、高い自由度で長期の研究資金制度を創設します。例えば、採択期間は最大10年とし、 研究の評価は短期的な成果よりも、研究のビジョンと独創性を重視して実施するようにします。
- 政策2_長期プロジェクトにおける予算執行の柔軟化:研究資金の前倒し・繰越・変更などに柔軟に対応できるようにします。プロジェクト予算の繰越・前倒しを原則認可制から「事前登録制」に簡素化し、年度単位からプロジェクト単位へ変更します。
- 【参考】日本で繰越や前倒しが難しいのは、政府の会計年度の原則と研究費の期間が一致していることにあります(高橋宏・石橋一郎『研究費会計制度の日米比較 』)。そのため、事前登録制の導入にあたっては、現行の国の予算執行の枠組みとの整合性をどう図るか、法的な整理を含め、実現に向けた課題も慎重に検討する必要があります。
2-3. 外部資金を原資とした無期雇用の推進
- 現状分析:大学が獲得する外部資金の多くは1〜5年程度の有期プロジェクトに紐付いています。また、現行の会計制度の制約により、獲得した外部資金を年度を跨いで戦略的に蓄積し、将来の投資や不測の事態(資金獲得の波)に備えることが困難です。その結果、その資金で雇用される若手研究者や専門スタッフ(URA、技術者等)の多くは、不安定な有期雇用を余儀なくされています。これは優秀な人材の流出や、若手研究者がキャリア形成の見通しを持ちにくくなることにつながっています。
- 目指す姿:大学が多様な財源を効果的にマネジメントし、運営費交付金にとどまらず、外部資金を活用して、無期雇用の人員をさらに拡大します。そのために、外部資金から直接的な研究費だけではなく、比較的裁量をもって大学が使える財源を捻出します。
- 政策1_大学の財務マネジメント能力を強化:公的資金の間接経費率をあげ、また民間からの外部資金についても間接経費率を高めるガイドラインを国として策定します。また、各大学が外部資金由来の財源で無期雇用の人員を増やしたり、短期的に外部資金を得にくい分野への支出をすることで支援します。あわせてこうした高度な財務マネジメントを企画・実行できる人材を大学が獲得・育成・配置できるように国として支援します。
- 政策2_年度に縛られない財務モデルの導入:外部資金には年度によって獲得できる額にばらつきがあるため、大学が変動にたえられるよう、中長期的に資金を貯蓄できる仕組みとします。具体的には、現在一部の大学にしか認められていない大学運営基金の制度を、全ての国立大学に広げることを目指します。
2-4. 篤志家からの寄付を大学が集めやすくするように税制を改正します
- 現状分析:アメリカをはじめとして、海外の大学では寄付金、及び寄付金を原資にした資金運用が収入の柱となっており、科学技術の発展を支えています。他方、日本の大学は、寄付金収入の規模で海外に遅れをとっています。寄附税制については、これまでも優遇がはかられてきたところではあるが、さらに効果的な仕組みの導入も検討すべきです。
- 【参考】内閣府資料
- 目指す姿:運営費交付金などを充実させることを前提として、民間からの寄附、及び寄附を原資にした運用益も大学の基盤的な財源として活用されるようにします。
- 政策_日本版DAFの創設:大学・科学技術領域へ篤志家からの寄付を集める仕組みとして、アメリカのドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)を参考に日本版DAFをつくります。大学への寄附集めをできる制度を整えることで、より積極的に大学の教育・研究 へ市民からの資金を還元することができます。
- 【参考】DAFは篤志家が自ら財団法人などを立ち上げることなく、寄付の運用や寄付先の選定に関与できる寄付の枠組みである。アメリカでは DAF を活用して大学へ寄附を行った場合にも税控除を受けることができる。(出典:一般社団法人社会変革推進財団)
2-5. 研究業務をAI・IT導入と支援人材の充実で効率化します
- 現状分析:書類作成・研究費管理・申請手続きなどの業務負担が研究者に大きくかかり、研究時間を圧迫しているという課題があります。
- 原因① 大学や公的研究機関等では、研究資金を申請したり、その使い方を報告したりする際に、多くの書類作成や手続きが必要となり、研究者が本来の研究に使う時間が大きく削がれてしまっています。大学・研究機関ごとに異なるローカルルールが存在し、研究者の異動・連携が阻害されています。
- 原因② 研究者を支える専門サポート人材(テクニシャン、ラボマネージャー、ファンディングマネージャー、秘書、ライティングスタッフ等)が欧米諸国と比較して著しく不足しており、研究者が研究以外の業務に多くの時間を割かざるを得ない状況が、研究効率の低下を招いていますが、AI・ITによって業務改善をすることで、こうした専門サポート人材がよりやるべきことに集中できるようにします。
- 目指す姿:研究支援業務へのAI・IT導入を推進し、研究者の事務手続きの負担を減らしつつ、不正な研究費支出を最小化します。
- 政策1_RMSの導入:事務手続きの負担を軽減すべく、研究費・人材・装置等の研究活動に関連する項目を一元管理するResearch Management System(RMS)を導入します。RMSの導入とフォーマット・データ仕様の標準化を進め、研究費執行ルールの全国的な原則統一を目指し、異動・兼務・共同研究時の手続きの共通化を実現します。
- なお、RMSの導入により、各プロジェクトの予実管理をスムーズに行い、大学監査部門による使途の記録・モニタリングを可能にします。なお、不正検知AIや異常支出パターンを検出するアラート機能を導入し、不正があった際の早期発見を実現します。
- 政策2_研究支援の専門職の充実:テクニシャン、ラボマネージャー、ファンディングマネージャー、リサーチアドミニストレーター(URA)、秘書、ライティングスタッフ等、研究支援の専門職の育成プログラムを充実させ、キャリアパスを整備します。職責と実力にみあった処遇を行える制度を全国に政府主導で導入し、キャリアパスを確立し、職としての魅力を高めます。
3. 若手研究者の育成、活躍環境の整備
3-1. 博士課程学生を研究者として位置づけ、徹底支援
- 現状分析_博士課程進学の現状:若手が研究者のキャリアを選びづらくなっている。また、自由度・報酬・研究環境などの点で、日本は欧米・シンガポール等と比較して魅力が乏しく、優秀な人材の国外流出が続いている。結果として、次世代の科学技術を担う高度人材の供給基盤が急速に弱体化している。
- 原因①博士課程を取り巻く停滞とキャリアの閉塞感:日本の博士課程進学率はOECD諸国でも最低レベルにあり、次世代を担う高度人材の供給能力が急速に減退している。若手層にとって研究職の魅力が低下し、優秀な人材の国外流出や、経済的理由による博士後期課程進学断念が常態化している。現状分析2_学生という身分に伴う経済的困窮と不利益:博士課程学生は論文出版や後輩指導といった「知の創出・教育」に多大に貢献している。しかし、「学生」とみなされていることで対価が支払われず、無給あるいは学費を払いながらの研究活動を強いられている。生活費や授業料を確保するためのアルバイトが研究時間を圧迫し、研究の質とスピードを低下させる要因となっている。
- 原因②社会的信用の欠如とライフイベントとの乖離:博士課程での活動が職業として評価されにくく、住宅ローンの審査等、社会生活上の不利益が生じている。博士課程の期間は、妊娠・出産・育児といったライフイベントと重なることが多くありますが、ライフプランと研究キャリアの両立は容易ではありません。次世代の研究者を育成するためには、博士課程の学生が、安心してライフイベントを迎え、その後もスムーズに研究活動へ復帰できるモデルを示すことが重要です。
- 原因③限定的なキャリアパスと低い人材流動性:修了後の進路がアカデミアに偏り、産業界やスタートアップとの人材交流が極めて限定的である。制度的・文化的な障壁により、産学官を越境したイノベーション創出が困難な状況にある。
- 目指す姿:博士課程学生が「研究者」としての位置づけを獲得する:博士課程に通う方を「学生」ではなく、「研究を遂行するプロフェッショナルな仕事」を遂行する「研究者」として位置づけます。経済的不安なく研究に没頭できる環境を構築するとともに、卒業後も産学官を自由に行き来し、ライフイベントを柔軟に組み込める「越境型キャリア」を確立します。。
- 政策1_博士学生の「研究者」化と経済的自立の支援:リサーチ・アシスタント(RA)経費等の支援水準を大幅に引き上げ、生活費を十分に賄えるレベルの支給を徹底する。また、授業料後払い制度に加え、生活費(月額8万円程度)を対象とした所得連動型貸与制度を確立し、進学後の心理的負担を軽減する。所得連動型にすることで、博士課程で研究したあとの状況に応じて返済額を変動させることができ、不確実性が高い中でも博士課程への進学する際の不安を取り除き、不安を後押ししやすくなります。
- 【参考】現状、JASSOの授業料後払い制度がありますが、生活費が月額2万円または4万円と少額です。授業料は授業料減免制度を利用することもできますが、生活費は別途必要となるため、少なくとも第一種奨学金並み(月額8万円)の生活費を所得連動型で貸与できる制度が必要です。
- 政策2_ライフイベントと研究の両立支援パッケージ:妊娠・出産・育児を理由とする研究中断・休学期間中も、経済的な支援が継続されるよう、奨学金や研究費の支給停止期間の免除や、受給期間の柔軟な延長を可能とする制度を確立します。研究中断後のスムーズな復帰を支援するため、一時的な研究補助者の雇用経費の支援や、最新の研究動向をキャッチアップするためのプログラムを提供します。
- 政策3_産学官の垣根を越える人材流動化の促進:ヨーロッパの Industrial Ph.D 制度を参考として日本でも産業界との共同研究を通じて学位取得を目指すプログラムを広めます。また、専門性を活かして半年〜1年の長期間での有給インターンシップ(ブリッジ・インターンシップ)へ博士課程学生が参加することに国が助成を行います。これにより、企業は博士人材の高度な問題解決能力や専門知識を実務の中で直接評価でき、学生は産業界のニーズを理解し、自身のキャリアパスを考える貴重な機会を得られます。
- 政策4_マッチング基盤の構築:大学・企業・行政間で高度人材を相互派遣する「人材シェアリング制度」を運用します。博士人材データベース(J-GRAD等)と連携し、博士人材のスキルや希望を可視化する共通人材プラットフォームを展開します。
- 政策5_挑戦的な研究を支えるフェローシップの拡充:ポスドクや博士学生に対し、自由度が高く数年間にわたる安定的な研究費・雇用環境を提供します。
- 政策6_海外の優秀な人材を惹きつける環境整備:研究費、住環境、ビザ支援をパッケージ化した支援策を導入し、国内外の優秀層が日本を選び、活躍し続けられる基盤を整えます。
3-2. 若手研究者・学生が研究しやすい環境づくり
- 現状分析:若手研究者・学生の精神的健康の悪化が博士課程の中退、キャリア断念、国外流出等につながっています。
- 原因① 多くの研究室において、PI(研究代表者)は研究費、人事評価、進学・就職の推薦に関わる権限が集中しており、指導対象の学生・若手研究者に対する絶対的な力を持つ構造になっています。学生やポスドクは雇用形態や制度的保護が不安定で、PI(研究代表者)に従属的になりやすいといった課題があります。
- 原因② 研究室や大学は外からの監視が働きづらく、部屋の中で何が起きているのかが把握されにくいため、ハラスメントの温床となりやすい構造的な課題が存在します。通報窓口があっても、通報によって評価・推薦・人間関係に悪影響が出るのではという不安や、匿名性・中立性への疑問から当事者が声をあげづらいといった状況が存在します。
- 目指す姿:大学が研究環境の管理者としての責任を明確に果たし、問題のあるPI(研究代表者)に対しては、実効性のある指導や、状況に応じた適切な措置を行う体制を整備することで、ハラスメントの抑止力を高めます。また、メンタリングプログラムの充実など、良好な人間関係の構築を支援するソフト面の取り組みも推進します。
- 政策1_研究室運営の可視化と外部モニタリングの強化:研究室単位のガバナンス指標(離脱率、修了率、学生満足度)を設定・公開します。ただし、過度な監視が研究活動の自由闊達さを損なうことのないよう、研究室の自治を尊重しつつ、誰もが安心して研究に打ち込めるバランスの取れた環境構築を目指します。
- 政策2_開かれた運営体制:研究室内の権限集中を防ぎ、より開かれた運営体制を促進するため、事務職員の効果的な配置や、助教などの中間層アカデミアポストの充実と安定化を支援します。また、研究室間の移籍制度やローテーションの柔軟化を支援します。ハラスメントの発生や研究テーマのミスマッチ、指導スタイルの不一致などがあった際にも、研究のキャリアを継続すべく、ローテーション制度を整えます。
- 政策3_匿名性と保護を担保した通報・相談体制の整備:AIチャットボットによる24時間対応の匿名相談窓口の整備、独立した通報機関(第三者機関)の設置を行います。
- 政策4_部局横断的なメンタリングプログラムを整備:指導教授以外の教員や卒業生、ピアメンターが中立的な立場でキャリアや研究に関する相談に乗る体制を構築します。
4. 新産業の担い手を育成
4-1. 高専(KOSEN)を「イノベーションの総本山」へとアップデートします
- 現状分析: 日本の高専は、実践的な技術教育で世界から「KOSEN」として高く評価されており、求人倍率は約20倍という驚異的な需要を誇る「日本の宝」です。しかし、現場では30年以上前の老朽化した設備が残るなど、最先端の産業界とのギャップが生じています。また、学位が「準学士」に留まることで、国際的な評価や待遇面での障壁が存在します。
- 目指す姿: 高専を、AI時代の「科学技術立国」を牽引するイノベーションの総本山へと再定義します。理論だけでなく「実際にモノを動かせる」高専生の強みに、最先端の計算資源と起業家精神を掛け合わせ、世界をリードする技術者・起業家を輩出する環境を構築します。
- 政策1_AI・先端技術環境の抜本的強化: すべての高専に最先端のGPUサーバーを導入し、AIとハードウェアを統合的に扱える環境を整備します。5G/6G、次世代蓄電池、半導体製造など、国家戦略分野に対応した実習設備を「ハブ&スポーク型(拠点校への重装備集約とネットワーク共有)」で効率的に配置します。
- 政策2_高専の教員を拡充: 現役のトップ技術者を教員・講師として招聘できる柔軟な人件費枠を確保し、「知恵のシェアリング」を加速させます。
- 政策3_高専発スタートアップの全面支援: 「国立高専イノベーション基金(1,000億円規模/10年)」を創設し、学生のアイデアを即座にプロトタイプ化できるギャップファンドを提供します。近隣大学のTLO(技術移転機関)等と連携し、知財・法務支援をパッケージ化することで、技術を社会実装する起業家教育を標準化します。
- 政策4_学位の国際標準化: 高専卒業生の高度な技術力が正当に評価されるよう、学位のあり方や大学卒との給与格差の解消に向けた制度改正を推進します。
- 予算規模1_初期投資200億円:総額200億円の予算を措置します。予算は2年で措置します。
- 半導体技術者育成のためのクリーンルームをハブ拠点5箇所に作ります(180億円)。
- 全国の高専の通信環境を整備します(20億円)。
- 予算規模2_年次予算75億円:毎年75億円の予算をつけます。学生1人当たり約12.5万円/年になります。優れた技術者を1人育てたときの価値創出規模は十分に投資を上回ると考えています。
- 年次予算としてAI・GPU:を50億円/年措置します。
- 拠点校には高度専門人材の教員としての招聘の人件費を15億円つけます(1500万円/年の人材100名 = 各校に約2名を配置)。
- 高専発スタートアップ支援に約10億円をつけます(年500万円のギャップファンド200件=各校4件など)
4-2. AI時代に対応したリスキリングのアップデート
- 現状分析:市場ニーズとの乖離と公費投入の非効率化 現在の公的職業訓練は、デジタル化やAIの普及による労働市場の急激な変化に対応できていません。産業界が求めるスキルと訓練内容のミスマッチが常態化しており、低賃金・低需要な職種への訓練に多額の公費が投じられ、受講者のキャリアアップや成長産業への円滑な労働移動を阻害しているという深刻な課題があります。
- 原因① 新技術対応のタイムラグ: 現行の公的職業訓練の認定プロセスは、カリキュラム審査や予算割り当てに時間を要するため、生成AI等の急速な技術革新と市場ニーズの変化に対し、数年単位の遅れが生じています。
- 原因② 低水準な出口指標: 既存の「求職者支援訓練」における認定基準(就職率35%等)が低く、労働需要の低い職種(有効求人倍率0.1倍〜0.4倍程度)への訓練に公費が投じられ、結果として受講者の賃金上昇や労働移動につながっていません。
- 原因③ 官民の役割分担の硬直化: 行政が講座内容の詳細を決定する仕組みにより、産業界が真に求めるスキルと教育内容のミスマッチが常態化しています。
- 目指す姿:行政主導の形式的な審査から脱却し、市場評価と事後成果(賃金上昇・就職実績)に基づいた柔軟かつ高効率な訓練制度への転換を目指します。AIを活用して個人の潜在スキルと市場需要をマッチングさせ、IT・データサイエンス等の高成長分野への労働移動を加速させることで、個人の所得向上と日本経済の生産性向上を同時に実現します。
- 政策1_ガバナンス改革:規制緩和:市場連動型・成果評価への移行
- 「形式審査」から「市場評価」への転換: 行政による事前のカリキュラム精査を簡略化する代わりに、過去の「修了生の賃金上昇率」や「成長産業への就職実績」といった事後評価データに基づき、講座の継続可否を自動的に決定する仕組みを導入します。
- 採用直結型認定: 「修了生を〇名以上、年収〇万円以上で採用する」と事前にコミット(合意)した企業が存在する講座については、行政によるカリキュラム審査を免除し、即時「ホワイトリスト」として公的訓練に認定します。
- 認定基準の抜本的引き上げ: 労働需要の低い職種に関する訓練への公費投入を制限し、IT・データサイエンス・DX等の高需要職種へのシフトを促します。
- 政策2_補助金改革:成果報酬型(Pay for Success)の導入
- インセンティブの再設計: 教育事業者への奨励金を「受講者数」ベースから「成果」ベースへ移行。具体的には、受講生が「一定水準以上の年収で再就職した際」や「前職比で賃金が向上した際」に重点的に報酬を支払います。
- 出世払い型ローン(Income Share Agreements)の活用: 高度な専門スキル習得に対し、政府が受講費を立て替え、再就職後の収入が一定額を超えた場合にのみ支払う仕組みを整備し、個人の受講リスクを低減します。
- 「リスキリング採用税制」: 新部門が指定する高度スキル職種において、未経験のリスキリング人材を採用・育成した企業に対し、法人税の控除や教育訓練費の助成率を引き上げます。
- 政策3_デジタルプラットフォーム:AIスキル・マッチング基盤の構築: カナダの事例を参考に、求職者の経歴(潜在スキル)と労働市場のリアルタイム求人データをAIで照合します。「あとどのスキルを補完すれば、どの程度の賃金向上が見込めるか」を個人に提示し、最適な講座選定から就職までを一気通貫でサポートします。
- カナダ政府は、AI労働分析プラットフォーム「SkyHive」と連携し、データ駆動型の支援を展開しています。失業者が経歴を入力すると、AIが保有スキルを自動抽出し、市場データと照合し、「現在のスキル」と「希望職種で求められるスキル」の差分をリアルタイムで特定し、必要な訓練をピンポイントで提示しています。