2. 質の高い知を生み出す大学・研究基盤の抜本改革
2-1. 運営費交付金の大幅拡充
- 現状分析 :現在、政府の研究開発投資は総額としては増えています。しかし、大学が裁量をもって使うことのできる運営費交付金は法人化以降、減少しています。運営費交付金が減少することで、多くの大学で外部資金への依存が高まっています。その結果、短期的な成果を求められる資金が増え、基礎研究や挑戦的なテーマへの取り組みがしづらい状況です。特に、地方大学を中心に大学の運営基盤そのものが脆弱化しています。その結果、基本的な経費も各研究室の運営費で賄わざるを得ず、研究活動や教育に深刻な支障が生じています。
- 政策1_運営費交付金の規模を大幅拡充:運営費交付金の「基幹経費分」を約2000億円分増やします(絶対額で1.28兆円へ)。現在、令和7年度の補正予算で運営費交付金421億円が措置され、令和8年度予算の政府原案は対前年度188億円増となる予定です。しかし、2004年度水準からこの間の人件費の増額
- 運営費交付金は2004年(国立大学法人化時点)に1.24兆円だったものが、2024年には1.08兆円になっています。そのため、2004年の水準に戻すためには1600億円程度の増額が必要になります。(出典:国立大学協会HP)
- しかし、元の水準に戻すだけでは十分ではありません。国立大学法人は人事院勧告に則って人件費を上げることが求められます。2004年から2025年までに人件費は10%ほど増額となっています。また、科学実験やAI研究には電気が必要ですが、電気代も2004年から大きく値上がりしています。産業用電気料金は2010年から2023年にかけて74%向上しています(資源エネルギー庁)。これらを勘案し、最低でも運営費交付金は2000億円まで増額することが望ましいと考えています。
- 政策2_運営費交付金をなめらかな制度にする:今後、物価の変動によって大学の経営が行き詰まらないよう、迅速な対応をできるようにするため、運営費交付金が人事院勧告や光熱費などの増加分と連動する仕組みとします。こうすることで、国立大学の研究者の人件費の最低限のところは国が保証することが可能になり、大学の経営に最低限必要な資金は国が責任をもって支出する仕組みとします。
- 政策3_運営費交付金を安定化:基盤経費分の「成果を中心とする実績状況に基づく配分」を廃止し、成果による上下があるものは「機能強化促進分」に一本化します。こうすることで「基幹経費分」の1.28兆円を安定的に分配します。
- 【参考】現状、運営費交付金のうち基盤的な経費部分にも「成果を中心とする実績状況に基づく配分」が存在します。文部科学省HPの説明によると、KPIの達成状況に応じて75%まで削減される可能性があります。しかし、基盤的な運営費について、成果連動の考え方を組み込むのは、資金の目的や特性と不整合であると考えられます。
2-2. 挑戦的な研究を促進する研究費改革
- 現状分析:研究者が自由に使える研究費が相対的に少なく、使途も厳しく制限されているため、機動的な研究環境への投資や、長期的な視点での研究活動が困難になっています。
- 原因① 多くの研究資金が、公募テーマに沿う1-3年単位のKPIや短期成果に基づく配分となっており、基礎研究や挑戦的なテーマへの取り組みがしづらい課題があります。研究費を獲得しなければ研究が立ち行かない状況が、競争的資金獲得のための書類作成業務の更なる負担増を招いています。
- 原因② 研究プロジェクトの予算は、原則としてその年度の終わり(3月末など)までに使い切らないと国に返さなければならないため(予算失効)、複数年にわたる研究計画であっても、年度内に支出を終える必要があります。特に、予算が認められた後でなければ発注できない上、納品にも時間がかかる高価な研究機器の購入や、長期的な視点での研究者の雇用計画を進める上で、大きな障害となっています。ただし、現在、科研費は基金化されて、前倒し利用や繰越しがしやすくなりました。
- 【参考】文科省のデータによると、大学等教員の職務活動時間割合において、研究活動の占める割合はH14では46.5%であったのに対してH30で32.9%と単調減少、一方教育活動の占める時間は23.7%→28.5%で単調増加となっています
- 目指す姿:短期的な成果やKPIの呪縛から研究者を解放し、10年先を見据えた革新的な知の創出に専念できる環境を構築します。
- 政策1_挑戦的な研究を促進する研究費の導入:既存の科研費に比して、さらに挑戦的・基礎的研究を推進できるような、高い自由度で長期の研究資金制度を創設します。例えば、採択期間は最大10年とし、 研究の評価は短期的な成果よりも、研究のビジョンと独創性を重視して実施するようにします。
- 政策2_長期プロジェクトにおける予算執行の柔軟化:研究資金の前倒し・繰越・変更などに柔軟に対応できるようにします。プロジェクト予算の繰越・前倒しを原則認可制から「事前登録制」に簡素化し、年度単位からプロジェクト単位へ変更します。
- 【参考】日本で繰越や前倒しが難しいのは、政府の会計年度の原則と研究費の期間が一致していることにあります(高橋宏・石橋一郎『研究費会計制度の日米比較 』)。そのため、事前登録制の導入にあたっては、現行の国の予算執行の枠組みとの整合性をどう図るか、法的な整理を含め、実現に向けた課題も慎重に検討する必要があります。
2-3. 外部資金を原資とした無期雇用の推進
- 現状分析:大学が獲得する外部資金の多くは1〜5年程度の有期プロジェクトに紐付いています。また、現行の会計制度の制約により、獲得した外部資金を年度を跨いで戦略的に蓄積し、将来の投資や不測の事態(資金獲得の波)に備えることが困難です。その結果、その資金で雇用される若手研究者や専門スタッフ(URA、技術者等)の多くは、不安定な有期雇用を余儀なくされています。これは優秀な人材の流出や、若手研究者がキャリア形成の見通しを持ちにくくなることにつながっています。
- 目指す姿:大学が多様な財源を効果的にマネジメントし、運営費交付金にとどまらず、外部資金を活用して、無期雇用の人員をさらに拡大します。そのために、外部資金から直接的な研究費だけではなく、比較的裁量をもって大学が使える財源を捻出します。
- 政策1_大学の財務マネジメント能力を強化:公的資金の間接経費率をあげ、また民間からの外部資金についても間接経費率を高めるガイドラインを国として策定します。また、各大学が外部資金由来の財源で無期雇用の人員を増やしたり、短期的に外部資金を得にくい分野への支出をすることで支援します。あわせてこうした高度な財務マネジメントを企画・実行できる人材を大学が獲得・育成・配置できるように国として支援します。
- 政策2_年度に縛られない財務モデルの導入:外部資金には年度によって獲得できる額にばらつきがあるため、大学が変動にたえられるよう、中長期的に資金を貯蓄できる仕組みとします。具体的には、現在一部の大学にしか認められていない大学運営基金の制度を、全ての国立大学に広げることを目指します。
2-4. 篤志家からの寄付を大学が集めやすくするように税制を改正します
- 現状分析:アメリカをはじめとして、海外の大学では寄付金、及び寄付金を原資にした資金運用が収入の柱となっており、科学技術の発展を支えています。他方、日本の大学は、寄付金収入の規模で海外に遅れをとっています。寄附税制については、これまでも優遇がはかられてきたところではあるが、さらに効果的な仕組みの導入も検討すべきです。
- 【参考】内閣府資料
- 目指す姿:運営費交付金などを充実させることを前提として、民間からの寄附、及び寄附を原資にした運用益も大学の基盤的な財源として活用されるようにします。
- 政策_日本版DAFの創設:大学・科学技術領域へ篤志家からの寄付を集める仕組みとして、アメリカのドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)を参考に日本版DAFをつくります。大学への寄附集めをできる制度を整えることで、より積極的に大学の教育・研究 へ市民からの資金を還元することができます。
- 【参考】DAFは篤志家が自ら財団法人などを立ち上げることなく、寄付の運用や寄付先の選定に関与できる寄付の枠組みである。アメリカでは DAF を活用して大学へ寄附を行った場合にも税控除を受けることができる。(出典:一般社団法人社会変革推進財団)
2-5. 研究業務をAI・IT導入と支援人材の充実で効率化します
- 現状分析:書類作成・研究費管理・申請手続きなどの業務負担が研究者に大きくかかり、研究時間を圧迫しているという課題があります。
- 原因① 大学や公的研究機関等では、研究資金を申請したり、その使い方を報告したりする際に、多くの書類作成や手続きが必要となり、研究者が本来の研究に使う時間が大きく削がれてしまっています。大学・研究機関ごとに異なるローカルルールが存在し、研究者の異動・連携が阻害されています。
- 原因② 研究者を支える専門サポート人材(テクニシャン、ラボマネージャー、ファンディングマネージャー、秘書、ライティングスタッフ等)が欧米諸国と比較して著しく不足しており、研究者が研究以外の業務に多くの時間を割かざるを得ない状況が、研究効率の低下を招いていますが、AI・ITによって業務改善をすることで、こうした専門サポート人材がよりやるべきことに集中できるようにします。
- 目指す姿:研究支援業務へのAI・IT導入を推進し、研究者の事務手続きの負担を減らしつつ、不正な研究費支出を最小化します。
- 政策1_RMSの導入:事務手続きの負担を軽減すべく、研究費・人材・装置等の研究活動に関連する項目を一元管理するResearch Management System(RMS)を導入します。RMSの導入とフォーマット・データ仕様の標準化を進め、研究費執行ルールの全国的な原則統一を目指し、異動・兼務・共同研究時の手続きの共通化を実現します。
- なお、RMSの導入により、各プロジェクトの予実管理をスムーズに行い、大学監査部門による使途の記録・モニタリングを可能にします。なお、不正検知AIや異常支出パターンを検出するアラート機能を導入し、不正があった際の早期発見を実現します。
- 政策2_研究支援の専門職の充実:テクニシャン、ラボマネージャー、ファンディングマネージャー、リサーチアドミニストレーター(URA)、秘書、ライティングスタッフ等、研究支援の専門職の育成プログラムを充実させ、キャリアパスを整備します。職責と実力にみあった処遇を行える制度を全国に政府主導で導入し、キャリアパスを確立し、職としての魅力を高めます。
採用されたトピック
誤変換である情勢を醸成に修正する
政策文書や広報資料における「寄付文化の情勢」という表記を、本来の意図である「寄付文化の醸成」へと修正する。誤変換を放置することは文書の信頼性を損なうため、正確な用語への統一を求めるものである。この修正により、寄付を促す社会的な機運を高めるという政策の目的をより明確に伝えることが可能となる。
議論されているトピック
AIを研究の質を高めるパートナーとして活用する
AIを単なる事務効率化の道具ではなく、数学的未解決問題の解明や高度な知の創出を支援する「知の探究のパートナー」として位置づけます。AIとITを演算や数値検証に活用し、研究の質そのものを飛躍的に高める環境を整備します。
学会のデジタル移行と専門性評価制度を刷新する
既存の学会や物理的な研究所をデジタル空間上の「22世紀ユニバーサル・ラボ」へ統合し、研究速度を極限まで高めます。あわせて、文理の区分や専門性による資格制限を撤廃し、数理に基づいた無境界な教育と新しい専門性評価制度を確立します。
市民が高度な研究に参画できる共創基盤を整備する
数論と物理学を融合して「無限」を扱う基礎研究拠点を創設するとともに、AI研究の整合性を自動検証する「検証AIラボ」を構築します。専門家だけでなく、アーティストや市民がAIを介して高度な科学研究に参画できる共創プラットフォームを社会実装します。
みんなからの提案(3件)
このセクションに対して寄せられた変更提案です。提案はチームみらいが検討し、採用されるとマニフェストに反映されます。
「2-5. 研究業務をAI・IT導入と支援人材の充実で効率化します」の「目指す姿」を、単なる事務負担軽減や不正支出の抑制にとどまらず、『AI・ITを演算や数値検証の強力なパートナーとして活用し、数学的未解決問題の解明や高度な知の創出を飛躍的に加速させる環境を構築する』という、研究の質そのものを高める方針へ書き換える。
理由: AIを単なる事務効率化のツールではなく、エルドシュ・シュトラウス予想といった高度な数理的研究を加速・深化させる「知の探究のパートナー」として位置づけ直すため。
「3. 科学技術」セクションに新項目として、数理的知能基盤による『はやい学会』の実現を追加する。具体的には、数論的物理モデルを活用した多層推論エンジンを構築し、証明の完成を待たず論理層で解の経路を瞬時に判別することで研究速度を極限まで高める。また、既存の学会や物理的研究所(ハコモノ)を解体・統合し、ゲームやメタバース空間を主戦場とした全世界接続型の研究基盤「22世紀ユニバーサル・ラボ」を創設する。これに伴い、「文理芸」の区分や学部の専門性による学芸員・教員資格の制限を撤廃し、数理に基づいた無境界教育と新しい専門性評価制度を確立する。
理由: 物理定数の起源を数論的に解明する理論を基盤に、既存の学術・教育制度の停滞(「遅すぎる学会」や「縦割り制度」)を打破し、AIによる超高速な推論と、全世代が参加可能なデジタル空間での知の創発を実現するため。
「2. 質の高い知を生み出す大学・研究基盤の抜本改革」等に、数論と物理学を融合し「無限」を扱う基礎研究拠点の創設を追加する。また、数学・物理のトップ研究者(5〜6名規模)を核とした、AI研究の整合性を自動検証する「検証AIラボ」を構築する。これにより、大学や学会の枠を超え、アーティストや市民がAIを活用して高度な科学研究に参画・共創できるプラットフォームを社会実装する。
理由: 数論と物理学の融合(特に無限の扱い)が科学発展に不可欠である一方、既存の大学・学会組織は閉鎖的であるため。AIを活用することで非専門家でも高度な理論構築が可能であることを投稿者自身が証明しており、その成果を正当に評価・検証する仕組みを公的に整備することで、知の民主化と革新を目指す。