3. 若手研究者の育成、活躍環境の整備
3-1. 博士課程学生を研究者として位置づけ、徹底支援
- 現状分析_博士課程進学の現状:若手が研究者のキャリアを選びづらくなっている。また、自由度・報酬・研究環境などの点で、日本は欧米・シンガポール等と比較して魅力が乏しく、優秀な人材の国外流出が続いている。結果として、次世代の科学技術を担う高度人材の供給基盤が急速に弱体化している。
- 原因①博士課程を取り巻く停滞とキャリアの閉塞感:日本の博士課程進学率はOECD諸国でも最低レベルにあり、次世代を担う高度人材の供給能力が急速に減退している。若手層にとって研究職の魅力が低下し、優秀な人材の国外流出や、経済的理由による博士後期課程進学断念が常態化している。現状分析2_学生という身分に伴う経済的困窮と不利益:博士課程学生は論文出版や後輩指導といった「知の創出・教育」に多大に貢献している。しかし、「学生」とみなされていることで対価が支払われず、無給あるいは学費を払いながらの研究活動を強いられている。生活費や授業料を確保するためのアルバイトが研究時間を圧迫し、研究の質とスピードを低下させる要因となっている。
- 原因②社会的信用の欠如とライフイベントとの乖離:博士課程での活動が職業として評価されにくく、住宅ローンの審査等、社会生活上の不利益が生じている。博士課程の期間は、妊娠・出産・育児といったライフイベントと重なることが多くありますが、ライフプランと研究キャリアの両立は容易ではありません。次世代の研究者を育成するためには、博士課程の学生が、安心してライフイベントを迎え、その後もスムーズに研究活動へ復帰できるモデルを示すことが重要です。
- 原因③限定的なキャリアパスと低い人材流動性:修了後の進路がアカデミアに偏り、産業界やスタートアップとの人材交流が極めて限定的である。制度的・文化的な障壁により、産学官を越境したイノベーション創出が困難な状況にある。
- 目指す姿:博士課程学生が「研究者」としての位置づけを獲得する:博士課程に通う方を「学生」ではなく、「研究を遂行するプロフェッショナルな仕事」を遂行する「研究者」として位置づけます。経済的不安なく研究に没頭できる環境を構築するとともに、卒業後も産学官を自由に行き来し、ライフイベントを柔軟に組み込める「越境型キャリア」を確立します。。
- 政策1_博士学生の「研究者」化と経済的自立の支援:リサーチ・アシスタント(RA)経費等の支援水準を大幅に引き上げ、生活費を十分に賄えるレベルの支給を徹底する。また、授業料後払い制度に加え、生活費(月額8万円程度)を対象とした所得連動型貸与制度を確立し、進学後の心理的負担を軽減する。所得連動型にすることで、博士課程で研究したあとの状況に応じて返済額を変動させることができ、不確実性が高い中でも博士課程への進学する際の不安を取り除き、不安を後押ししやすくなります。
- 【参考】現状、JASSOの授業料後払い制度がありますが、生活費が月額2万円または4万円と少額です。授業料は授業料減免制度を利用することもできますが、生活費は別途必要となるため、少なくとも第一種奨学金並み(月額8万円)の生活費を所得連動型で貸与できる制度が必要です。
- 政策2_ライフイベントと研究の両立支援パッケージ:妊娠・出産・育児を理由とする研究中断・休学期間中も、経済的な支援が継続されるよう、奨学金や研究費の支給停止期間の免除や、受給期間の柔軟な延長を可能とする制度を確立します。研究中断後のスムーズな復帰を支援するため、一時的な研究補助者の雇用経費の支援や、最新の研究動向をキャッチアップするためのプログラムを提供します。
- 政策3_産学官の垣根を越える人材流動化の促進:ヨーロッパの Industrial Ph.D 制度を参考として日本でも産業界との共同研究を通じて学位取得を目指すプログラムを広めます。また、専門性を活かして半年〜1年の長期間での有給インターンシップ(ブリッジ・インターンシップ)へ博士課程学生が参加することに国が助成を行います。これにより、企業は博士人材の高度な問題解決能力や専門知識を実務の中で直接評価でき、学生は産業界のニーズを理解し、自身のキャリアパスを考える貴重な機会を得られます。
- 政策4_マッチング基盤の構築:大学・企業・行政間で高度人材を相互派遣する「人材シェアリング制度」を運用します。博士人材データベース(J-GRAD等)と連携し、博士人材のスキルや希望を可視化する共通人材プラットフォームを展開します。
- 政策5_挑戦的な研究を支えるフェローシップの拡充:ポスドクや博士学生に対し、自由度が高く数年間にわたる安定的な研究費・雇用環境を提供します。
- 政策6_海外の優秀な人材を惹きつける環境整備:研究費、住環境、ビザ支援をパッケージ化した支援策を導入し、国内外の優秀層が日本を選び、活躍し続けられる基盤を整えます。
3-2. 若手研究者・学生が研究しやすい環境づくり
- 現状分析:若手研究者・学生の精神的健康の悪化が博士課程の中退、キャリア断念、国外流出等につながっています。
- 原因① 多くの研究室において、PI(研究代表者)は研究費、人事評価、進学・就職の推薦に関わる権限が集中しており、指導対象の学生・若手研究者に対する絶対的な力を持つ構造になっています。学生やポスドクは雇用形態や制度的保護が不安定で、PI(研究代表者)に従属的になりやすいといった課題があります。
- 原因② 研究室や大学は外からの監視が働きづらく、部屋の中で何が起きているのかが把握されにくいため、ハラスメントの温床となりやすい構造的な課題が存在します。通報窓口があっても、通報によって評価・推薦・人間関係に悪影響が出るのではという不安や、匿名性・中立性への疑問から当事者が声をあげづらいといった状況が存在します。
- 目指す姿:大学が研究環境の管理者としての責任を明確に果たし、問題のあるPI(研究代表者)に対しては、実効性のある指導や、状況に応じた適切な措置を行う体制を整備することで、ハラスメントの抑止力を高めます。また、メンタリングプログラムの充実など、良好な人間関係の構築を支援するソフト面の取り組みも推進します。
- 政策1_研究室運営の可視化と外部モニタリングの強化:研究室単位のガバナンス指標(離脱率、修了率、学生満足度)を設定・公開します。ただし、過度な監視が研究活動の自由闊達さを損なうことのないよう、研究室の自治を尊重しつつ、誰もが安心して研究に打ち込めるバランスの取れた環境構築を目指します。
- 政策2_開かれた運営体制:研究室内の権限集中を防ぎ、より開かれた運営体制を促進するため、事務職員の効果的な配置や、助教などの中間層アカデミアポストの充実と安定化を支援します。また、研究室間の移籍制度やローテーションの柔軟化を支援します。ハラスメントの発生や研究テーマのミスマッチ、指導スタイルの不一致などがあった際にも、研究のキャリアを継続すべく、ローテーション制度を整えます。
- 政策3_匿名性と保護を担保した通報・相談体制の整備:AIチャットボットによる24時間対応の匿名相談窓口の整備、独立した通報機関(第三者機関)の設置を行います。
- 政策4_部局横断的なメンタリングプログラムを整備:指導教授以外の教員や卒業生、ピアメンターが中立的な立場でキャリアや研究に関する相談に乗る体制を構築します。
採用されたトピック
誤変換である情勢を醸成に修正する
政策文書や広報資料における「寄付文化の情勢」という表記を、本来の意図である「寄付文化の醸成」へと修正する。誤変換を放置することは文書の信頼性を損なうため、正確な用語への統一を求めるものである。この修正により、寄付を促す社会的な機運を高めるという政策の目的をより明確に伝えることが可能となる。
議論されているトピック
学生プログラマーのチーム開発拠点を整備する
学生プログラマーがチームで開発に没頭できる拠点を整備し、民間組織と連携してコミュニティ活動や開発資金を直接支援する仕組みを導入する。従来の個人単位の支援だけでなく、チーム開発やコミュニティ形成を促進することで、若手IT人材の育成と挑戦を後押しする。
所得連動型貸与の生活費上限を増額する
大学院生等を対象とした所得連動型貸与制度において、生活費の貸与限度額を月額8万円から15万円程度へ大幅に引き上げる。あわせて、財源を確保するために支給対象者の適切な選定や絞り込みを行う条件を設ける。
海外日本人専門人材の還流を促進する
海外で活動する日本人研究者や専門職が、帰国後も不当な評価を受けず、かつ海外の職責や永住権を維持しながら国内で活動できるよう、リモート併用や兼務を容認する柔軟な雇用制度を整備します。知名度に依存しない実績評価の仕組みを構築し、高度人材の国内還流を促進します。
みんなからの提案(3件)
このセクションに対して寄せられた変更提案です。提案はチームみらいが検討し、採用されるとマニフェストに反映されます。
「科学技術」および「産業」分野のポリシーに、海外流出した日本人専門人材の還流を促進するための記述を追加する。具体的には、海外での実績を知名度に依存せず正当に評価する仕組みの構築、採用後の処遇改善・キャリア支援の強化、さらに海外拠点の職責を維持したまま日本で活動できる「兼務容認」や「リモート併用型ワークスタイル」を制度化する。
理由: 海外に流出した優秀な日本人が、海外の大学の知名度不足による不当な評価や、永住権維持といった制度的制約(二重国籍の非容認等)によって帰国を断念している現状を打破し、日本への貢献を容易にするため。
政策3-1の政策1において、所得連動型貸与制度の対象となる生活費の額を「月額8万円程度」から「月額15万円程度」へ引き上げる。また、財源の制約を考慮し、大学院生および給付対象者の適切な選定・絞り込みを行う条件を追記するとともに、【参考】欄の比較記述も実態に合わせて修正する。
理由: 現行の月額8万円では最低賃金や生活保護水準を下回っており、生活支援として不十分であるため。また、支給額の引き上げに伴う財源確保の観点から、対象者の適切な選定を前提とする必要があるため。
科学技術・若手研究者の育成・活躍環境の整備に関する項目に、『学生プログラマーがチームで開発に没頭できる拠点を整備し、民間組織とも連携しながらコミュニティ活動や開発資金を直接支援する体制を構築する。』という記述を追加する。
理由: 意欲ある学生プログラマーが目標に向かって切磋琢磨し、挑戦できる環境を整えるために、従来の個人支援だけでなくチーム開発拠点や外部組織を通じたコミュニティ支援が必要であると考えるため。