2. 先生と家庭を支える、温もりのあるデジタル基盤を
2-1. デジタルによる教員の働き方改革を進めます
- 現状分析:2024年度、年度当初時点で2割の学校で教員不足が生じているなど、教員不足は全国的に深刻な問題です。その背景には教員の多忙化があります。
- 【参考】OECDのTALIS調査(2018年)によると、日本の教員の労働時間は長いにもかかわらず、授業にあてられる時間は短く、学校の先生が本質的なこと以外に時間を使ってしまっています。 小学校では 54.4 時間/週(OECD平均は40.6時間/週)。中学校では56.0時間/週(OECD平均は38.3時間/週)。そのうち授業に充てられるのは、中学校で18 時間程度で世界最短水準です。
- 目指す姿:AIなどの新たな技術を導入するにあたって、まずは教育現場の現行の課題を包括的に洗い出し、教員の業務効率化を徹底することで、新しい取り組みへ対応できる基盤を整備することが不可欠です。
- 政策1_やめることリストを徹底的に進める: 2025年5月に策定された「教育DXロードマップ」では「12のやめることリスト(デジタルに変えること)~教師が学習者に向き合う環境を実現するために~」がすでに示されており、こうしたビジョンはまさに「デジタル時代の当たり前」であり、迅速かつ徹底的にやりきるべきと考えます。
- 政策2_デジタルによる業務改革:IT/AIツールや追加の人員配置により、教員の授業外業務を削減します。補助金等を活用し、校務支援ツールを積極的に導入します。 各自治体の教育委員会にデジタル推進のケイパビリティをもつ職員がいない場合に、政府から人員を派遣し、地方も含めて各校への円滑なテクノロジー導入を支援します。
- 【参考】AIによる授業準備支援の成功事例は、すでに他国で出てきつつあります。イギリスでは、教員向けのAIアシスタント「Aila」プロジェクトが進められています。そのパイロット版の調査では、教材作成における負担軽減と質の向上、そして教師の全体的な業務負担の軽減に貢献した実績が報告されています。
- 政策3_学校支援・先生支援AIを開発:生徒の個人情報を安全に扱うことのできるAIを配布することで、教職員が広範な業務にAIを活用できるようにします。
- 外国にルーツのある子ども・家庭への多言語での情報のやり取りは、現状のAIで十分手軽に実行可能です。
- 短期的には、出欠連絡や学校からのお知らせ、保護者とのやり取りなどの校内業務を、スマートフォンやPC上で完結させるツール(すでに民間事業者によるものが複数存在)を各校に導入します。
- いじめ等の問題発生時の対応マニュアルなどを読み込めるAIを配布します。 経験の浅い教員であっても、被害生徒・加害生徒、および各ご家庭へのより迅速かつ適切な対応が可能になります。
- 政策4_保護者対応のデジタル化:保護者からの問い合わせや要望は、原則として全て録音・テキスト化し、対応記録としてデータベースに保存します。これにより、情報を学校全体で共有し、より適切な対応につなげます。 また、不当・過大な要求から一人ひとりの教員を守ります。さらに、 対応事例の共有を通じて、全国の類似事案への対応力を向上させます。
- 展望_中長期でのデジタル化:中期的には、調査書や学習指導要録など、校種をまたいだ申し送り事項もデジタル化します。 長期的には、諸外国の事例も参考に、国産AIを用いた授業準備・評価・教材検索ワンストップツールを開発し、教材作成にかける労力を大幅に削減することを目指します。
- 政策5_教職員のAIリテラシー向上:日々進化し続けるAIの使い方を学ぶ機会を設け、採点や宿題のチェック、教材の準備など、AIで効率化できる業務はどんどん手放します。 文部科学省のリーディングDXスクールなどの、学校全体での取り組みで参考になるものも、さらに積極的に広めていきます。 都道府県教育委員会等と連携して、これからの教員に求められる人物像に合わせた、教員採用試験のアップデートにも努めます。
2-2. 子ども・家庭をプッシュ型で支援
- 現状分析:子ども・家庭が抱える課題は、経済的な困窮、学習の遅れ、不登校、いじめ、発達上の課題、ヤングケアラー問題など極めて多岐にわたりますが、表面化しにくく、支援のニーズが見えていないことも少なくありません。 現状、支援を必要とする子どもや家庭へのアプローチは、各機関(学校、教育委員会、福祉部局、医療機関、地域の子育て支援団体など)が個別に情報を把握し、対応することが一般的です。こうした縦割り型の支援体制下では、情報連携が不足し、必要な支援が迅速に届きません。また、自ら声を上げることができない子どもや家庭の潜在的なニーズを見落としてしまいます。さらに、複数の機関が関わる中で、支援内容の重複や漏れが発生します。情報の収集・分析、関係機関との調整、個別の支援計画の策定などで教職員や支援者の業務負担が増大する ことも考えられます。
- 目指す姿_プッシュ型支援:AIを活用すれば、あらかじめ問題を検知し、情報お届け・提案型の個別で、行政から積極的に問題解決のための行動を起こすことができます(プッシュ型支援)。
- 政策_プラットフォーム構築: 多機関連携型のデータプラットフォームを構築します。学校(出欠席、学習状況、面談記録など)、教育委員会(不登校相談、いじめ事案記録など)、福祉部局(生活保護、児童手当、子育て相談記録など)、医療機関(健診データ、発達相談記録など)、その他地域の子育て支援団体などが持つ匿名化・非識別化された関連データを、高いセキュリティ基準のもとで一元的に集約・連携するプラットフォームを構築します。
- 政策3_データ分析・プッシュ型支援:構築されたデータプラットフォーム上の情報(たとえば、欠席の増加、特定の科目での成績低下など)をAIが複合的に分析し、いじめや不登校の兆候、家庭内の変化、学習上の困難、心身の不調など、支援が必要となる可能性のある子どもや家庭を早期に抽出します。 AIによる分析結果に基づき、支援のニーズが推定される子どもや保護者に対し、個別化された情報を提供します。
- 子どもの学習面での支援が推定される場合、地域の子ども向け学習支援教室の情報やオンライン教材の紹介を、保護者向けには経済的支援制度や子育て相談窓口の情報を、最適なタイミングでデジタルツール(例:保護者向けアプリ、LINE公式アカウント)を通じて自動配信します。
- 特定の状況に応じて、学校の担任教員やスクールソーシャルワーカー、地域の民生委員など、信頼できる人物からの個別連絡をAIがレコメンドし、より丁寧なアプローチを促します。これにより、情報提供と人間による直接的な橋渡しを連携させます。
- AIが検知したニーズや、これまでの支援事例データを分析することで、子どもや家庭の状況に合わせた最適な支援メニューや支援機関を提案する機能を開発します。これにより、教職員や支援者が限られた時間の中で、膨大な支援情報の中から適切なものを探し出す手間を省き、より質の高い支援計画を迅速に立案できるよう支援します。
- AIによる情報集約、分析、提案機能は、教職員や支援者の事務的・情報収集の負担を大幅に軽減し、経験の浅い教職員でも質の高い支援を提供できるようになります。 過去の成功事例や類似ケースの支援経過をAIが提示することで、支援のノウハウを共有し、全体の支援レベルの向上を図ります。これにより、教職員はデータの分析や書類作成に費やす時間を減らし、子どもや家庭との直接的な関わり、個別支援の実践、専門的な判断といった、人間ならではの業務に集中できるようになります。
- 政策_プライバシー保護:情報提供に際しては、匿名性やプライバシー保護を最優先とし、情報を受け取る側が不安感・不快感を抱かないよう、情報提供の目的や利用されるデータの範囲について明確に説明します。
- 個人が特定できない形でのデータ連携を徹底し、プライバシー保護を最優先とします。必要な場合は、個人情報の利用目的を明確化し、保護者の同意を十分に得るプロセスを導入します。
- AIの分析結果は、支援の必要性に関する参考情報として、関連する教職員や支援者にのみアラートとして通知され、その後の専門職による判断や具体的な介入につなげます。
議論されているトピック
AI防犯カメラで福祉的支援に繋げる
学校にAI異常検知機能付き防犯カメラを設置し、侵入者対策だけでなく、子供の挙動から家庭環境の悪化や心身の不調を早期発見する。検知後は警察や福祉、医療機関へ迅速に繋ぐ体制を構築する。
いじめ対応を警察へ完全移管する
いじめ対応の主導権を学校から警察へ完全に移行し、軽微な事案も含め警察による捜査を標準対応とする。学校は調査主体から外れ、客観的な事実確認を行う立場に限定することで、中立性の確保と教員の負担軽減を図る。
中学校への情報科新設と教員加配を行う
中学校への教科「情報」新設に際し、教員の加配予算を優先的に確保し、免許外担任問題を解消する。授業時間の確保はAI学習による他教科の効率化で創出し、成績評価にはAI支援を導入して現場の負担増を回避する。
みんなからの提案(10件)
このセクションに対して寄せられた変更提案です。提案はチームみらいが検討し、採用されるとマニフェストに反映されます。
「2-1. 教員の働き方改革」および「2-2. 子ども・家庭への支援」の両項目において、デジタル化の目的は、教員や支援者が子どもや家庭一人ひとりの心に寄り添う、対面での生身のコミュニケーションの時間を最大限に確保することであると明記し、デジタルでは補えない心のケアの重要性を強調する記述を追加する。
理由: 子育てには生身の人間の力が必要であり、デジタル技術はあくまで補助手段として「人間ならではの役割(心のケア等)」を強化するための時間を生むためのものであると明確にするため。
「2-1. デジタルによる教員の働き方改革を進めます」の項目に、教職員の処遇改善に関する記述を追加する。具体的には、民間企業との給与格差を是正し、深刻な教員不足を解消するため、教職員の月給を一律1〜2万円程度引き上げる措置を講じる旨を明記する。
理由: 教員不足の大きな原因が民間企業との給与格差にあると考え、一律の月給引き上げによって職の魅力を高め、人員を確保するため。
「外国にルーツのある子ども・家庭への多言語での情報のやり取りは、現状のAIで十分手軽に実行可能です」という記述を、「多くの外国語でのやり取りは現在のAIで手軽に実行可能になりつつありますが、自国でも少数言語話者である親の読み書き能力が十分ではない場合もあるため、音声読み上げ機能などを活用します。また、現時点のAIでは十分に対応できない少数言語話者についても、個別で必要な対応を検討し、誰一人取り残さないよう留意します。」に変更する。
理由: AIによる多言語対応の現状肯定にとどまらず、少数言語話者が抱える「読み書きの困難さ」という実態に配慮し、音声機能の活用や個別対応の必要性を明記することで、包摂的な支援を目指すため。