3. 教育の“バグ”を直し、国家の成長戦略としての投資を
3-1. 高校入試にデジタル併願制を導入します
- 現状分析1_公立高校入試の一発勝負のリスク: 現行の入試制度では選抜機会が一度しかないため、不合格を恐れて実力相応、あるいは挑戦的な志望校を諦めてしまう傾向があります。
- 現状分析2_高校入試におけるリスク回避行動:生徒が本来の能力を発揮できる学校ではなく、ランクを下げた志望校選び(「攻めの受験」の回避)が常態化しています。
- 現状分析3_高校入試による教育格差の拡大: 経済的理由で公立高校しか選択肢がない家庭ほど、不合格のリスクを避けるために志望校を下げざるを得ません。これが教育格差の一因となっています。
- 目指す姿:経済的に困窮する家庭の生徒がリスクを恐れずに挑戦できる環境を整え、意欲ある学習者の機会損失を最小限に抑えます。
- 政策_デジタル併願制の導入制度の概要: 受験生が複数の公立高校を第1志望、第2志望…と順位をつけて登録できる仕組みを構築します。 受験生の希望順位と成績に基づき、合格可能な学校の中で「最も志望度が高い学校」にシステムが自動でマッチングを行います。この仕組みを導入することで、公立高校進学を強く希望する生徒に対し、一度の試験で複数のチャンスを提供し、不合格による進路喪失を防ぎます。
- 展望1_大学入試制度への横展開: 高校入試での実績を足掛かりに、将来的に公立大学入試など、他の公立教育機関の選抜試験への応用を目指します。
- 展望2_他のマッチングへの横展開:マッチング以外にも、以下のようなアルゴリズム活用による教育の質向上を検討します。 個々の学習進度に最適化された「教材推薦アルゴリズム」 、支援が必要な生徒を早期に発見する「スクリーニング・アルゴリズム」等。
- 【参考】技術的背景と理論 DAアルゴリズムの活用: この仕組みは、ゲーム理論においてノーベル経済学賞の対象ともなった「DAアルゴリズム(受入保留アルゴリズム)」を基礎としています。学術的に実証された手法を用いることで、個人の主観的な不安に左右されず、公平かつ効率的な学校配分が可能になります。
3-3. 基礎自治体の創意工夫を活かす「教員人事権」の部分的委譲
- 現状分析: 現在、公立小中学校の教員の人事権(採用・配置)は主に都道府県教育委員会にあり、基礎自治体(市区町村)の意向が十分に反映されにくい構造になっています。その結果、自治体が「AI教育に力を入れたい」といった独自の教育ビジョンを掲げても、それに合致する専門性を持つ人材を主体的に確保・配置することが難しく、確保できても持続可能性がありません。その結果、地域ごとの創意工夫が阻害されています。
- 目指す姿: 教育の主体を地域住民に最も近い基礎自治体へと戻し、地域の特色やニーズに即した「尖った教育」を可能にします。都道府県による広域的な質保証と、基礎自治体による柔軟な人材活用を両立させる「ハイブリッド型人事システム」を構築します。
- 政策1_「地域枠・スペシャリスト枠」の創設: 都道府県が管理する全体の定数のうち一定割合を、基礎自治体が独自に選考・配置できる「地域イノベーション枠」として開放します。これにより、特定の技術(AI、英語、芸術等)を持つ外部人材や、地域の課題解決に意欲を持つ人材を自治体主導で登用可能にします。
- 政策2_自治体間の「人事マッチングプラットフォーム」構築: 教員の希望と自治体の教育ビジョンをAIでマッチングするシステムを導入します。これにより広域での人事慣行を維持しつつも、教員が「自分の専門性を活かせる自治体」を逆指名できる仕組みを整え、意欲ある教員の適材適所を実現します。
- 政策3_教育長・校長の裁量権拡大と評価の連動: 基礎自治体の教育委員会が、独自の人事方針に基づき校長を公募・登用できる範囲を広げます。自治体独自の教育成果(EBPMに基づく検証結果)を国や県が評価し、優れた取り組みを行う自治体には、さらなる人事・予算の自由度を与えるインセンティブ構造を構築します。
3-4. 教育データ利活用によりEBPMを推進します
- 目指す姿:EBPM(証拠に基づく政策立案)の推進に向けた基盤を構築します。チームみらいの政策として導入したものの実施状況や効果についても、実際に子どもや家庭にどのような影響を与えているかを、データで追跡・可視化します。AIによる効果測定と評価サイクルを導入し、支援内容の改善や制度の見直しに繋げます。これにより、支援が「積極的」かつ「必要十分」に届いているかを客観的に評価し、継続的な改善を図ります。
- 【参考】英国の教育省(DfE)では「Explore Education Statistics (EES)」というプラットフォームを通じて、学校の財務状況や学力に関するデータをAPI形式で公開し、政策モデルのオープンな検証を可能にしています。
- 政策1_データ標準化:データに基づいた効果的な教育政策を実現するために、日本においても教育データ標準仕様(例えば、IMS Common CartridgeやLTIといった国際標準規格に、日本独自の拡張を加えたもの)を定めることを検討します。
- 政策2_データ基盤:匿名加工された教育データを安全かつ倫理的に管理・運用するための組織の創設を検討するなど、EBPMを推進するための基盤整備が必要です。例えば、過去の試験問題をAIが活用しやすいように整備することで、AIの精度を飛躍的に向上させることが期待できます。これは、教育データの効果的な利活用の一例です。 【参考】イギリス政府Education Data Trust
3-5. 社会教育施設のデジタルトランスフォーメーションを推進します
- 現状分析:美術館、博物館、図書館、公民館などの社会教育施設は、地域文化の振興や生涯学習の機会を提供する上で重要な役割を担っていますが、多くの施設で運営基盤の脆弱性や人材不足が課題となっています。
- 学芸員などの専門職員は、資料収集、整理、調査研究、展示企画、教育普及活動など多岐にわたる業務を抱え、負担が大きくなっています。
- 文化財や歴史的資料の保存・継承、研究活動において、デジタル技術の活用が十分に進んでおらず、情報の共有や効率化、新たな価値創出の機会を逃している可能性があります。同様に、書籍・論文・新聞記事など、有益な情報リソースが複数のデータベースに分散しており、横断的な検索やアクセスが難しくなっています。
- 所蔵資料のデジタル化やテキストデータベース化も十分に進んでおらず、高度な検索やビッグデータ解析への活用が限定的である状況です。
- AI技術は、その扱いに長けた人と苦手な人との間にデジタル・ディバイドを生む側面もあり、この解消は、社会教育施設の重要な役割の一つと言えます。
- 目指す姿:AI等のテクノロジー活用を支援し、資料管理、簡易な問い合わせ対応、施設の維持管理業務などを効率化することで、専門職員がより高度な専門業務や利用者サービスに注力できる環境を整備します。
- 政策1_国営の高品質な「統合型情報アクセスプラットフォーム」を構築・提供:既存の学術論文やアーカイブ資料の包括的なデジタル化とテキストデータベース化を進め、検索性の抜本的向上とビッグデータ研究への活用を可能にします。これにより、災害等による文化財損失リスクも低減します。
- 政策2_国立国会図書館・国立大学図書館の施設拡充や人員増強:国立国会図書館を年齢制限なくすべての国民に開放します。また、利用申請手続きを大幅に簡素化します。同様に、国立大学の図書館について、学生(小中高生および大学生・大学院生等)が、身分を証明することで他の利用者と同様のサービスを受けられるよう、積極的な開放を促します。
- 【参考】日本の知の集積地である国立国会図書館は、満18歳未満の利用に際し、施設のキャパシティや人員体制を理由とした利用条件や、事前の煩雑な申請手続きを設けており、子どもたちの自由な情報探索を妨げる大きな要因となっています。
- 政策3_文化・歴史研究・教育のDX:文化財や歴史的資料の研究において、画像解析AI、3Dスキャン、ビッグデータ解析などのテクノロジー導入を支援し、研究の深化と効率化を図り、文化の継承と発展に貢献します。デジタル技術を活用した新たな展示手法やオンラインでの学習プログラム開発を促進し、より多くの人々が文化に触れる機会を創出します。
- 政策4_図書館などのインターネット回線の充実:AI技術の活用スキルはますます重要になっていくため、図書館などの社会教育施設において、十分な速度のインターネット回線を確保し、住民のAIスキル向上に向けた取り組みを推進します。
3-6. EdTechの開発と学校への導入に大胆に投資します
- 現状分析:全国で1人1台端末は整備されましたが、スペックが不足しています。例えば、 推奨帯域を満たす学校はわずか2割強(21.6 %)にとどまっています。 自治体ごとに前年踏襲的な予算組みがされるケースもあり、高スペックな端末や高速な回線が全国的には実現できていないのが現状です。また、GIGAスクールで端末は整備されましたが、ソフトウェアは各自治体任せとなっています。
- 目指す姿:行政が主導して環境整備とEdTechの市場形成をすることで、子どもたちが質の高いハードウェア・ソフトウェアで学べる環境を構築します。
- 政策1_ソフトウェア更新費用の措置:2025年度のGIGAスクール端末更新に合わせてソフトウェア費用を措置します。
- 政策2_EdTechの振興:500億円規模のEdTechスタートアップへの政府ファンドを新設して投資します。また、日本版 Buying for Schools frameworkを構築・実施し、基礎自治体の調達コストを減らすため都道府県レベルでの共同調達制度を導入することで、導入コストを減らします。
- 【事例・データ】イギリスBuying for Schools framework:学校現場で使用できるEdTechプロダクトの安全性評価・認証制度のこと
3-7. 教育国債の導入などで、政府全体で、教育への投資予算を確保します
- 現状分析:日本が国家として投入する教育費は、対GDP比だと諸外国より低いです。 対子どもの数比でみると先進国並みですが、人材のみが細い勝ち筋である以上、先進国並みの投資で満足している場合ではなく、さらに投資水準を引き上げるべきです。
- 目指す姿:教育への国家投資を拡充します。教育への投資は、経済成長となってリターンが戻ってくる可能性が高い点において、バラマキではなく賢い投資先です。
- 政策_教育への国家投資の拡充:具体的には、AI活用による業務効率化などで支出の圧縮を図って教育に回した上で、投資対効果を推計した上で、回収できる分だけ教育国債を発行することも検討します。
反映された提案
「3. 教育の“バグ”を直し、国家の成長戦略としての投資を」の政策2のタイトルに含まれる「教科情報の親切」という文言を「教科情報の新設」に変更する。
理由: マニフェスト内のタイトルにおける明らかな誤字(「親切」と「新設」の変換ミス)を修正するため。
議論されているトピック
デジタル併願制にセット割引を導入する
デジタル併願制の具体策として、共通試験とAIマッチングを導入し、さらに複数校受験時の「セット料金体系」を構築する。家計の受験料負担を軽減し、挑戦の機会を広げる。
マニフェストの誤記や書式を修正する
マニフェスト内の誤字脱字(親切/新設)、事実誤認(高専への飛び級)、計算ミス(300%/30%)、およびマークアップの表示不備を全面的に修正する。公表物としての正確性と視認性を確保する。
不当な職務命令を拒絶できる規定を明文化する
地方公務員法における上司への服従義務の例外として、法令違反や隠蔽に関わる不当な職務命令を拒絶できる規定を明文化する。あわせて、違法な命令を出した管理者に対する厳格な懲戒処分ルールを策定し、教育現場のコンプライアンスと透明性を確保する。
みんなからの提案(37件)
このセクションに対して寄せられた変更提案です。提案はチームみらいが検討し、採用されるとマニフェストに反映されます。
「3-5. 社会教育施設のデジタルトランスフォーメーションを推進します」の政策1(統合型情報アクセスプラットフォーム)に、信頼性の高い著作物(学術論文、事典、図鑑等)の利用・アクセス実績に応じて、著作者や研究者に対し適切な利益を分配する還元システムを構築し、知的財産を保護する方針を追加する。
理由: 生成AIによる不確かな情報の拡散を防ぎつつ、信頼性の高い情報の再生産を支えるため、利用実績に基づく著作者への適切な還元と知的財産保護が必要だと考えたため。
「3-1. 入試制度の改革」に関する記述を修正し、以下の内容を明記する。1. 経済的背景による格差解消のため、公立校や共通入試の出題範囲を教科書の内容に基づいたものへ適正化し、塾に通わずとも学校教育のみで最難関校に挑戦できる環境を整える。2. 多角的な評価の導入については、体験格差や家庭環境が不当な影響を与えないよう慎重に設計し、試験の一発勝負が持つ『学力による公平な機会』という利点を損なわない制度を維持する。3. AI学習ログ等の日々の学習履歴については、評価への活用を行わない方針とする。
理由: 塾に通わなければ難関校に合格できない現在の教育格差を解消するため。特に経済的に不利な状況にある子どもでも、教科書の学習範囲と試験の一発勝負という公平な仕組みによって、自らの学力で挑戦できる環境を保障したいという意図がある。また、多角的評価や学習ログの活用が、かえって体験格差やプライバシー上の懸念から新たな不公平を生むことを防ぐため。
「3-5. 社会教育施設のデジタルトランスフォーメーションを推進します」の政策2に対し、「大学の廃止や統廃合に伴う大学図書館リポジトリの消滅リスクを回避するため、国立国会図書館が対象となる論文をすべて引き継ぐための法整備を実施する。これにより、国内の研究成果がオンライン上で永続的に管理される体制を確立し、研究者が高額な費用を払って海外雑誌に掲載せずとも国内で安定的に論文を公開・保持できる環境を構築する」という記述を追記する。
理由: 大学の統廃合によって生じる研究リポジトリ消失リスクの回避と、学術論文の永続的な管理体制の整備を通じて、公費の海外流出抑制および国内の研究環境改善を図るため。